【両利きの経営】両利きの経営
2024/01/10 更新
両利きの経営
(1)両利きの経営は、既存の事業を経営しながら、新規事業を開発する経営のことをいいます。
(2) 本質的には既存の事業の運営と新規事業の開発は矛盾することを指摘されています。
(3)これらの両立させるときには特別な注意点・工夫が必要であると指摘されています。
既存の事業と、新規事業が矛盾すること
(1)既存の事業を運営するうえでは、利益がでておりその維持が優先されます。その結果、その綿密な計画と管理が重視され、品質の維持が重視されます。
過去の成功体験を経験となっており、新しい挑戦を受け入れられません。現状維持バイアス(リスクを取るよりも現状維持を望んでしまう心理。)、損失回避のバイアス(100円を得することより、100円の損失を嫌う心理。)が働いています。利害関係者が多数おり、リスクをとるような挑戦をするだけの根拠を集めるためにコストがかかるだけでなく、反対者が一人でもいれば、リスクある選択ができません。成功の罠、既存事業の慣性
(2)新規事業ではアイデアはいろいろ試してみて、上手く行きそうな指標がでたプロジェクトに集中投資することになります。これが見つかるまで時間がかかります。売上新規事業の開発では、心配を恐れずに新しいことに挑戦するマインドが重視されます。新規事業では、適切なアイデアが生み出される環境を作り、新しいプロジェクトを遂行し、その結果を正確に測定し、ブロジェクトの変更、中断をスピディーに判断することが求められます。
(3)既存の事業で得た利益で、新規事業の挑戦をすることになります。そうなると、既存事業の側からは、コスト削減をして得た利益で、儲かるか分からない事業に投資することに批判的な意見ができるなど、組織内での対立が生まれます。例えば、この場合に打算的な調整をしたりすれば、思い切った投資ができず、お互いに足を引っ張ることになります。
(4)例えば、リアル店舗型のビデオ屋が、インターネットでのレンタル事業を開始しようとすれば、新規ビジネスが既存ビジネスの売り上げを毀損するおそれもあります(カニバリゼーション)。
参考
ハーバードビジネスレビュー2022年4月号52頁~54頁
加藤雅則 (著)ほか「両利きの組織をつくる 大企業病を打破する「攻めと守りの経営」」66頁~69頁、77頁~83頁
両利きの経営
両利きの経営は、既存の事業を経営しながら、新規事業を開発する経営のことをいます。
以下の点がポイントです。
1 異なる組織として併存させること
既存の事業と、新規事業を別々の組織として管理します。
2 既存事業の深堀
(1)既存事業を深堀りします。将来の市場規模、競合の存在等を考慮して、既存の事業の将来性を客観的に分析します。既存事業については、無理のない計画を立てます。
(2)新規事業を探索します。既存事業の会社資産、組織能力を活用して、将来の有望な成長領域を見つけます。
3 新規事業の推進する旨の強いビジョン(経営者の強い意志)
(1)両利きの経営の代表格とされるAGC(旧旭硝子)では、経営者が「素材の開発をする会社である。素材によるソリューション提供会社である。」という会社の存在意義を再定義し、ミドル層の社員に経営方針の作成を委ねました。
(2)事業開発部門を設置し、投資額として3000億という具体的な金額を設置しました。
(4)経営者が幹部、若手社員を集めて対話集会を開きました。
(5)経営者が幹部を集めて、対話合宿を開きました。
(6)「挑戦を評価する」人事制度へと変更しました。
4 経営者の関与
(1)両利きの経営の代表格とされるAGC(旧旭硝子)では、例えば、新規事業と既存事業の間で、資金、人材等について利害対立が発生した場合には、直接、経営チーム(3人の経営者)が関与して調整することになっています。(2)経営者が、新規事業のリーダーと綿密に連絡を取り合って、必要な支援をするように周りに働きかけて、新規事業を保護し支援する必要があります。
(3)経営者が予算を確保し、人材の確保を周りに働きかけけるか、新規事業に採用権限を付与する必要があります。
5 新規事業を保護し支援する仕組み
(1)新規事業を既存事業から守る仕組み、新規事業を援助する仕組みが必要になります。
(2) 両利きの経営の代表格とされるAGC(旧旭硝子)では、 事業開発部門が存在し、新規事業の人頭指揮をとります。事業開発部門が、新規事業のネタを探し、3000億の予算を確保し、新規事業に資金を出します。既存事業の会社資産、組織能力だけでは、リソースが足りない場合には積極的にM&Aも行います。
参考
加藤雅則 (著)ほか「両利きの組織をつくる 大企業病を打破する「攻めと守りの経営」」86頁~132頁