Q 定年退職者について、雇用契約を拒否できる場合とはどんな場合ですか。
2025/05/09 更新
高年齢者雇用安定法
高年齢者雇用安定法は、会社に以下の対応を義務付けています。
(1)定年を60歳未満としてはならない。
(2)①②③のいずれかの措置をとらなければならない。
①65歳まで定年を延長すること
②定年を撤廃すること。
③65歳までの雇用継続制度を設けこと。
60際の定年後に1年間の有期用で再雇用された場合や、雇用の期間、賃金、労働時間を確定するに足る再雇用制度がある場合
最判24年11月29日労判1064号13頁
(1)60際の定年後に1年間の有期用で再雇用された社員が、期間満了後に継続雇用を拒否された事案について、客観的に合理的な理由がない限り、雇止めは許されないとされた。以下、平成24年最判という。
(2)平成24年最判については、高年齢者雇用安定法が65歳までの定年延長もしくは、65歳までの雇用継続制度の導入を義務付けていること考えると、「60歳の定年後に65歳までの間に再雇用を拒否された場合には、継続雇用制度等により、雇用の期間、賃金、労働時間を確定できる事案では、解雇等を認めるべき事情のない限り、同内容の雇用契約が成立する。」ことを認めた判例であるとされる。
継続雇用制度がない場合
60歳の定年後に65歳までの間に再雇用を拒否されたが、継続雇用制度等が存在しない場合には、再雇用後の雇用契約を確定することができないために、再雇用後の雇用契約が成立することはなく、不法行為のみが問題となる(札幌地判平成22年3月30日労判1007号26頁、東京地判令和5年6月29日労判1305号29頁)。
65歳後の再雇用の拒否
(1)65歳後については、平成24年最判の考え方は直接及ばない。
(2)判例は、労契法19条2号を類推適用したり、平成24年最判を参照するなどして地位確認(再雇用後の雇用契約の成立)を認めるもの、労契法19条2号の類推適用を否定するもの、再雇用契約を締結することが規定され、契約内容が特定されているといった条件を満たす場合において再雇用契約の成立を認め得る余地があるとしたものなどがある。
参考
「自由と正義」2025年4月号22頁
労働契約法19条 (有期労働契約の更新等) 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。 一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。 二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。 |