NFT(エヌエフティ)
2023/05/13 更新
NFT(エヌエフティ)
(1)NFT(エヌエフティ)とは、Non Fungible Token(非代替性トークン)の意味です。
(2)例えば、ひまわりの絵の実物があればそれがオリジナルです。その絵の所有者は一人です。これに対して、写真データは複製することが可能であり、所有者を観念することができませんでした。
これに対して、ブロックチェーンに、権利者(所有者)を記載することでデータの所有者の証明が可能になりました。(証明書的なトークン)
(3)もちろん、データはいくらでもコピーできます。しかし、「ブロックチェーンで私が権利者と記載されている。オフィシャルの権利者は私です。」と、権利者が名乗れる仕組みです。
参考
千野剛司「仮想通貨とWeb3.0革命」40頁
NFT(ブロックチェック)で保護されるデータ
(1)ブロックチェーンに、動画、画像等のデータそのものは記載しません。データサイズが多くなると、取引コストが上がってしまうからです。
(2)通常は、グロックチーンで保護されるのは、「123456(の動画、画像等のデータ)は、keik345が所有する。」という記録のみです。
(3)もともとの動画、画像等のデータは別々に管理することになります。動画、画像等のデータをインターネット等で公開すれば、これらのデータそのものは、いくらでもコピー可能となります。逆に、どこかの会社の設備に預ければ、その会社が倒産すればそのデータが失われます。
(4)例えば、ある音楽データの所有者がA氏にあるとしても、A氏が音楽CDを販売してよいとは限りません。どのような権利がA氏に認められるかは、別に利用規約を定める必要があり、かつ、その内容で決まります。
この利用規約を事後的に書き換えられないようにする仕組みが別に必要になります。A社のHPで利用規約を公表し複数の会社にてバックアップをとる。もしくは、別に電子契約を別途締結することが考えられます。
(5)「NFTは、デジタルデータ(デジタル知財)の所有権を確立し、その流通を可能にした技術である。」と言われています。しかし、実際には、ブロックチーンで保護されるのは、「Aというデータについて、どんな権利かは不明であるが、その権利を持つのはBさんである。」にとどまります。
(6)逆に言えば、データの保存先との契約が切れてもともとの動画、画像等のデータは紛失します。利用規約が改変されて、当時の利用規約が分からなくなる、ということがありえます。
参考
天羽健介、増田雅史「NFTの教科書 ビジネス・ブロックチェーン・法律・会計まで デジタルデータが資産になる未来」164頁、180頁以下
NFTと、デジタル知財の所有権
(1)「NFTは、デジタルデータ(デジタル知財)の所有権を確立し、その流通を可能にした技術である。」と言われています。
(2)例えば、ある画像データの所有者がA氏にあるとしても、A氏がその画像を張り付けたTシャツを販売してよいとは限りません。どのような権利がA氏に認められるかは、別に利用規約を定める必要があり、かつ、その内容で決まります。
(3)現実的には、NFTの権利者の権利は、①「ブロックチェーンで私が権利者と記載されている。オフィシャルの権利者は私です。」と、権利者が名乗れるものに過ぎません。
もちろん、NFTの権利者にのみデータにアクセスできる権利を付与する。会員証としての役割を与えて、「会員制のコミュニティーに入れる権利」を付与することも考えられます。しかし、その場合には、B社のシステムにデータを入れて、B社のデータにアクセスするさの確認作業を手入力で行う等、NFTの世界とは関係部分で設定・取り扱いが必要です。
(4)ブロックチェーンで、AさんからBさんに権利を移転させるには、所有者であるAさんの承認が必要です。NFTの権利者の権利は、②これを承認する権利でもあります。
(5)なお、承認に必要なる秘密鍵をAさんが持っています。この秘密鍵のデータをハッキングされたり、秘密鍵のデータを消去させてしまったりする場合には、②Aさん自身も第三者にこの権利を譲渡できなくなる可能性があります。
参考
亀井 聡彦ほか「Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」」120頁
大塚雄介「最新 いまさら聞けないビットコインとブロックチェーン」181頁
NFTの意味と、既存の仕組みとの違い
1 既存の仕組み
(1)「マリオランドの土地を所有する」という例にとって、NFTにする意味を考えてましょう。
(2)任天堂のHPで、IDとパスワードを入力すれば、「マリオランドの土地の所有者はAさんである。」と証明することは簡単です。
2 NFTの場合
(1)NFT化するメリットの一つとして、「任天堂が消滅しても、この権利を保存できる。」という主張がありえます。
(2)しかし、任天堂のHP上では、「マリオランドの土地の所有者はAさんである。」という立て看板が立っている映像が見られ、自分の家として改造できる機能があるとします。しかし、これを他のゲームに持って行ってそのまま使うことはできません。
(3)実際に、「企業の管理なく、権利を保証する」という目的を達成するのであれば、AゲームのデータをBのゲームでも使えるように規格の標準化が必要ですし、標準化させるのであればNFTの意味がなくても、同じことが可能です。
3 利用規約とデータ
(1)NFTの場合には、利用規約とデータを別に管理する必要があります。仮に、それをA社のサーバに入れておくのであれば、実際には、その権利の保障をA社という企業に依存しています。既存の仕組みと比べてのメリットがあるかは疑わしい、といえるでしょう。
(2)NFTの目的については、規格の標準化とともに、バックアップという手法でも対応可能です。仮に、NFTが発展した場合には、既存の記述を使って同じことができないか、という流れができるかもしれません。
参考
天羽健介、増田雅史「NFTの教科書 ビジネス・ブロックチェーン・法律・会計まで デジタルデータが資産になる未来」164頁以下