Q 弁論主義(第一テーゼ)の要件と効果について教えて下さい。
2026/03/24 更新
弁論主義の第一テーゼ
(1)弁論主義の第一テーゼは、「裁判所は、①当事者の②主張しない③事実を裁判の基礎として採用してはならない。」という原則である。
(2)これは、 裁判所は、①当事者が②主張しない③事実を認定することはでない、という意味である。
①当事者
(1)当事者とは、原告もしくは被告のどちらでもよい。
(2)原告もしくは被告のいずれかの当事者が主張すれば、裁判所は、その事実を認定しても弁論主義違反とならない。
②主張されていること
(1)「主張されている」とは、訴状、答弁書、準備書面(以下、「主張書面」という。)に事実が記載されて、期日にて、例えば、当事者が「準備書面のとおり陳述します。」と口頭で述べたことが必要である。
また、期日にて、例えば、当事者が口頭で「時効を援用します。」と陳述し、裁判所が手続調書にその旨を記載する方法で、「主張する」こともある。
(2)例えば、証拠として提出されている契約書等から判明している事実であっても、それは、当事者が主張した事実ではない。
尋問手続で、当事者が証言した内容(から判明している事実)も証拠である。それは、当事者が主張した事実ではない。
③事実
(1)主要事実だけが弁論主義の対象となる。
(2) 主要事実だけでなく、重要な間接事実についても、弁論主義の対象となる、という考えもある。
(3)主要事実だけが弁論主義の対象となるのは、間接事実は、主要事実の推認に役立つ事実であり、証拠と同じ働きをする。例えば、Aさんが金回りがよくかったという間接事実があるとして、これに弁論主義が適用された結果、裁判所が他の証拠との関係でこれが真実であると考えたとしても、その事実を認定できなくなります。
| 釈明権の議論では、「裁判所には司法権として、事実を解明しその真実に適合した判決をする責任がある。」とされています。 「弁論主義によって裁判所がある事実認定できない、もしくはある事実が存在する」と認定させられることは、「証拠に基づいて、裁判所が正しいと思える事実を認定することができなくなる」という危惧があり、主張事実に限定されるのが、通説です。 |
重要な間接事実も弁論主義の対象となる、という考え方
重要な間接事実も弁論主義の対象となる、という考え方
(1)例えば、Aさんが金回りがよくかったという重要な間接事実について、当事者が主張していないのであれば、これを裁判所が認定することは、当事者にとって不意打ちとなるから、当事者が主張しない限り、これを認定することは許されない、という考え方があります。
民事訴訟については紛争の長期化を避けるためには、争点をしぼることが有益である。つまり、当事者が主張しない事実について、「裁判所がその存在を認定しない。したがって、その存否は争点とならない。」という方法で、その存在について争点を減らすことが有益である。したがって、間接事実についても弁論主義が適用されることを認めるべきである、という考え方です。
実務の運用
(1)確かに、裁判所にっても、当事者の主張する事実や証拠を頼りに裁判を進めるしかありません。したがって、裁判所からしても、当事者が主張しない事実が真実であると考える状況はほとんどありません。
(2)しかし、例えば、Aさんが金回りがよくかったという間接事実について、当事者が主張していない場合には、当事者としては、「裁判所がその事実を存在すると考えている。」と考えないでしょう。
したがって、裁判所は、「この点は当事者は、主張していません。しかし、裁判所としては、△△の証拠からすれば、☓☓とのではないか、という疑問を持っています。当事者双方ともこの点について主張を補充する書面を出して下さい。」という形で、釈明されるのが通常です。
(3)実務においては、「間接事実について、弁論主義の対象となる。」のと同じ状態で審理が進められます。
釈明権の議論では、「裁判所には司法権として、事実を解明しその真実に適合した判決をする責任がある。」とされています。私見にはなりますが、裁判所がある事実認定できない、もしくはある事実を認定させられるということがあれば、証拠に基づいて、裁判所が正しいと思える事実を認定することができなくなるという危惧があり、主張事実に限定されています。
通説の考え方
(1)もっとも、主要事実だけが弁論主義の対象となる、というのが判例・実務です。
(2)「弁論主義によって裁判所がある事実認定できない、もしくはある事実が存在する」と認定させられることは、「証拠に基づいて、裁判所が正しいと思える事実を認定することができなくなる」という危惧があり、主張事実に限定されるのが、通説です。
参考
長谷部由起子ほか「基礎演習民事訴訟法 第3版」84頁以下
勅使川原和彦「読解 民事訴訟法」8頁、9頁






