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民事訴訟

Q 明示的一部請求とは何ですか。その2

2026/03/23 更新

一部請求

(1)一部請求には、数量的一部請求と特定一部請求があります。
(2)特定一部請求とは、前訴では交通事故の物損を、後訴では人損だけを請求するような場合の前訴の請求であります。

(3)数量的一部請求とは、数量的に可分な債権に対して、残りの部分を後日請求することを前提として、その一部を請求する一部請求であります。

残部請求

1 問題点
(1)①数量的に可分な債権の一部について、②前訴でその一部を請求しその前訴が確定した。その後に、③「前訴の請求は一部請求である。今回は残部を請求する」として、後訴にて、残部の請求をすることは、前訴の既判力が及ぶために認められないのではないか。
2 結論と理由
(1)判例は、前訴にて、数量的に可分な債権の一部であることを明示していた場合には、前訴訟の既判力は後訴訟に及ばないので許されるとする。
(2)原告は、訴訟物を選択する権利がある(処分権主義)。前訴で請求されていない残部については、前訴の既判力が及ばないのが素直な解釈である。
 民事訴訟法では、訴額が大きくなれば印紙が増える。原告にとって、請求を分割することは必要である。
(3)原告の都合で、被告が何度も応訴を強いられる被告の負担も考慮しなければならない。
(4)前訴で一部請求であると明示されていれば、被告も残部請求について債務不存在確認等を提起してその不利益を解消する手段がある。
(5)よって、前訴にて、①数量的に可分な債権の一部であることが明示されている場合には、原告は訴訟物を分割できることから、その一部請求のみが前訴での訴訟物となるから、残部について後訴を提起することができる。

前訴で明示的一部請求を提起し、敗訴した場合の残部請求

1 問題点
 ①前訴で、明示的一部請求したが、その全部又は一部について敗訴した原告は、②その残部について後訴を提起することができるか。
2 訴訟物の観点
(1)明示的一部請求については、その一部請求のみが訴訟物となる。したがって、前訴と、後訴は訴訟物が別となるから、前訴訟で敗訴したとしても、後訴訟では、その影響を受けない。
(2)つまり、前訴の既判力により、原告の訴えが許されなくなるものではない。
3 信義則の検討
(1)しかし、明示一部請求において、その全部又は一部について敗訴した原告については、その残部を含めた請求全額について審理され、かつ、認容額を超えた部分について(残部請求を含む)ことが存在しないことが判断している。
 例えば、100万円のうち30万円を請求する訴訟で、20万円に限って認容された場合には、10万円において敗訴している。
 この場合、前訴にて、原告の主張する請求全額の100万円全体が審査の対象となって、80万円について不存在であることを理由に、20万円が認容されている(実質的に残部請求が審査されて、不存在だと判断されていること)。
(3)つまり、後訴の訴訟は、前訴で不存在と判断された請求権について再度、訴訟提起するものであるから、正しく紛争の蒸し返しにあたる(紛争の蒸し返し)。
(4)よって、前訴で、明示的一部請求したが、その全部又は一部について敗訴した原告は、その残部について後訴を提起することは信義則上許されない。

参考
 名津井吉裕ほか 「事例で考える民事訴訟法」224頁、225頁

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