判例(紹介予定派遣において、派遣先企業が面接したことだけでは派遣先企業との間で雇用契約は成立しない。派遣期間満了にて、直接雇用しないことも違法ではない。)
2025/07/21 更新
紹介予定派遣
(1)紹介予定派遣とは、派遣社員として一定期間(最長6ヶ月)働いた後、派遣先企業に直接雇用されることを前提とした派遣形態です。
(2)派遣期間満了後、派遣先企業と派遣社員が雇用契約を締結するかは、6ヶ月間の派遣期間内に双方が判断をします。
(3)通常の派遣では、就業前の書類選考(履歴書の提出)や面接が禁止されています。これに対して、紹介予定派遣では、就業前の書類選考や面接が認められています。
判例(大阪高判令和6年10月18日)
1 事案
(1)Xらは紹介予定派遣として、A社との派遣労働契約を締結する前に、Y社に履歴書及び職務経歴書を提出したほか、Y社の用意した訪問カードに健康状態や家族の状況などを記載して提出した(派遣先会社に履歴書を提出した)。
また、Xらは、Y社の1時間程度にわたる面接を2回受けた(派遣先会社による面接)。
その面接の結果、A社はXらに対し、紹介予定派遣の派遣社員としての内定を受けて、XらはA社との間で、派遣労働契約を締結した(派遣会社との雇用契約)。
(2)6ヶ月間の派遣期間満了後、Y社は、Xらに対しY社の社員として採用しないとし、XらはA社との間の派遣契約も終了した。
(3)Xらは、「派遣先会社であるYとの面談で、Yとの雇用契約が成立した。」と主張し、もしくは、「派遣期間満了後に、雇用される合理的期待を侵害された。」として慰謝料請求を請求する。
2 判決
(1)通常の派遣契約においては、派遣先企業と派遣社員との面談して、派遣先企業が派遣社員の採用を決めていた場合には、その他の事情も考慮したうえで派遣契約が無効となって、派遣先企業と派遣社員との間の雇用契約を認めうる余地もある。
(2)しかし、本件では、紹介予定派遣として許容される特定行為(派遣先会社による面接等)がされただけである。
当事者は、紹介予定派遣であることを前提として、面接および内定の手続きをしており、遣先企業と派遣社員との間の雇用契約は成立しない。
(3) 当事者は、紹介予定派遣であることを前提として、面接および内定の手続きをしており、派遣社員には、派遣期間満了後に、派遣先企業に雇用される合理的期待も存在しない。
京都地判令和6年2月27日 労判 1313号5頁
大阪高判令和6年10月18日
解説
(1)紹介予定派遣とは、派遣社員として一定期間(最長6ヶ月)働いた後、派遣先企業に直接雇用されることを前提とした派遣形態です。
本件では適法な紹介予定派遣であったので、「派遣期間満了後、派遣先企業と派遣社員が雇用契約を締結するかは、6ヶ月間の派遣期間内に双方が判断をするものである。」という判断がされました。
(2)通常の派遣では、就業前の書類選考(履歴書の提出)や面接が禁止されています。これに対して、紹介予定派遣では、就業前の書類選考や面接が認められています。
(3)派遣開始前に、派遣先企業が履歴書の提出を受けたり、派遣社員を面接したりすることは、特定行為と呼ばれて、通常の派遣では禁止されています。
これは、派遣先会社が実質派遣社員を雇用することが、(労働者の紹介によって不当な利益を得て、労働者を搾取する)労働者供給につながる。もしくは、雇用者としての責任者が不明確にあったることを禁止するためです。
紹介予定派遣によって、派遣先企業に面接が認められていることは特別であることを意味します。
(4)したがって、紹介予定派遣の実態を欠けば、「派遣先企業と派遣社員との間の雇用契約を認めうる。」という法解釈もありえるのかもしれません。
参考
ビジネスガイド2025年8月号70頁以下
ビジネスガイド2025年8月号96頁以下