判例(会社の買収について、弁護士資格を有する役員の責任が認められた。)
2025/08/11 更新
1 事案
(1)Yは弁護士資格を有し、A社の取締役であった。
(2)A社が対象会社をすることになり、YがA社の担当となった。
2 Yの問題
(1)Yが入手した対象会社の会計資料について、財務状態や経営状態は申告であったが、そのことをA社に説明しなかった。
(2)対象会社の会計資料には巨額の雑収入が計上されているなど不自然な点があったがこれを調査せず、A社にも報告しなかった。
(3)対象会社の会計資料には生命保険積立金が計上されていたが、これがが実態に伴わないことを知りながら、そのことをA社に説明しなかった。
3 A社や、A社の代表取締役であるXの損害
(1)A社は、対象会社の株式を1000万円で購入したが、A社は倒産し、同額の損害を被った。
(2)会社の買収にともなって、XはA社の銀行借入について、個人保証の借り換えを行った。
(代表取締役が変更する場合には、新しい代表取締役が個人保証を引き継ぐからである。)
会社の倒産にともなって、Xは個人保証をする必要があり、4000万円を支払った。
4 判決
(1)上記の事情のもとで、判決は、Yは取締役としての業務懈怠があるとされた。
(2)東京高判令和4年9月15日金判例1673号26頁は、会社法423条に基づいて、A社が被った損害について、Yに対し賠償を認めた。(会社に対する責任)
(3)東京地判令和6年4月9日判例タイムズ1533号210頁は、会社法429条に基づいて、Xが被った損害について、Yに対し賠償を認めた。(第三者に対する責任)