判例(右足に障害がある職員について、市が仕事内容や、職種について配慮をせず、多数回の家庭訪問(徒歩での移動が必要な業務)に従事させたことには、安全配慮義務違反があるとして、慰謝料が認められた)
2025/10/19 更新
奈良地葛城支部判令和4年7月15日
1 事案
昭和61年 職員は奈良市に採用された。
平成9年 職員は交通事故に会って右足に障害を負った。
平成17年 職員は保護課(ケースワーカー)に異動になった。
職員は足が不自由であったが、ケースワーカーとして家庭訪問等の業務を行った。
平成23年 職員は別の課に回された。(訪問等の仕事が減った。)
2 職員の主張
(1) 職員は、奈良市に対し右足の現状を伝えていたが、市庁敷地内に駐車場を確保したり、座席位置を工夫したり、して歩行距離の減少に努める合理的な配慮をしなかった。
(2) 職員は、奈良市に対し右足の現状を伝えていたが、奈良市は、訪問等の多い仕事(の多い職場で勤務)を命じた。
(3) これらは、安全配慮義務違反である。
3 裁判所の判断
右足の不自由な職員にとって、保護課での仕事については、家庭訪問の業務が大きな負担となるような状態にあった。奈良市も実情を容易に知り得る状態にあったのに、その業務負担を軽減する措置を取り、あるいは担当業務を変更するなどの措置を講じる義務を負っていたというべきであるにもかかわらず、職員を移動させず、かつ、多数回の家庭訪問に従事させたことには、安全配慮義務違反があるとして、上で、慰謝料の額を300万円の支払いを認めた。
解説
本件訴訟では、職員が慰謝料の請求だけしかしておらず、右足の症状悪化について逸失利益等の財産的損害について請求していませんでした。
裁判所は財産的損害を認めない代わりに、慰謝料を上澄みした可能性があります。
したがって、財産的損害を別に請求するようなケースっでは、本件の慰謝料額は参考にならない可能性があります。
参考
ビジネスガイド2025年11月号94頁以下