判例(「退社後2年間は、会社の顧客に対し、営業行為を行わない。」という退職後の競合禁止の合意については、「S市内において、退職後6か月間、会社の顧客に対し営業行為を行わない。」という限定解釈をして、その範囲で退職後の競合禁止の合意を有効とした。)
2025/12/27 更新
札幌高裁令和5年12月26日
1 事案
X会社は、アパート、マンションの管理事業ををしていた。
Yは会社を退職後に、競合するA社に入社した。
Yの退職後に、Yが担当している物件のオーナーが、A社に管理会社を変更した。
Yは、X会社に在職中に、「退社後1年は競合会社に入社しない、退社後2年間は、X会社の顧客に対し、営業行為を行わない(管理契約の変更のお願いをしたりしない)。」と誓約書を出していた。
Yの退職時の年収は、447万円で、あった。
2 判決
(1)企業は顧客の開拓等に労力をかけている。退職した社員が、在職中に構築した信頼関係を利用して、顧客を奪うことは不当な利益の取得にあたる。
(2) 「退社後2年間は、X会社の顧客に対し、営業行為を行わない(管理契約の変更のお願いをしたりしない)。」との合意については、「S市内において、退職後6か月間、X会社の顧客に対し営業行為を行わない(管理契約の変更のお願いをしたりしない)。」と合意の範囲で有効である。
(3)上記のように限定解釈する限りにおいて、代償措置が講じられていなくても、退職後の競業禁止の合意は有効である。
(4)X社が顧客を失ったことによる損害のうち、相当因果がある損害は約215万円である。
Yは同額の賠償義務を負う。
解説
(1)「退社後2年間は、X会社の顧客に対し、営業行為を行わない(管理契約の変更のお願いをしたりしない)。」とという退職後の競合禁止の合意について、「S市内において、退職後6か月間、X会社の顧客に対し営業行為を行わない(管理契約の変更のお願いをしたりしない)。」と限定解釈することで、合法としました。
(2)企業が広範囲の義務を規定した場合には、広すぎる故に無効とする考え方と、本件のように限定解釈をする考え方があります。
本判例は、限定解釈する考え方を採用しました。
参考
ビジネスガイド2026年1月号81頁以下






