実務家として読むべき専門書
2023/03/22 更新
判例の重要度の違い
(1)ときどき、下級審判決を大量に引用してくる書面が出てくることがあります。しかし、これはあまり意味がありません。
(2)裁判官は最高裁判例を重要視しています。
(3)これに対して、下級審判決は、個別の事件について別の裁判官が判断した一つの意見(考え方)にすぎません。裁判官は、下級審判決についてはあまり重視していません。
(4)感覚的に表現するのであれば、裁判官は、最高裁、高裁、地裁の判決を100%、30%、10%程度しか信頼していないという表現をさせる弁護士もいます。(中村直人「訴訟の心得 」25頁)
学説
(1)裁判では、学説はあまり重視されていないというのが印象です。
学者というのは「判例(裁判所)は〇〇と考えている。」と肯定的に捉えるだけでなく、「本来は△を考慮するべきであるから、×と判断すべきであった。」と批判的な意見を述べることも大事な仕事です。
これに対して、裁判所としては、今までの流れ(判例の蓄積によって形成された、裁判所の考え方、判例相場)を重視します。
裁判官が執筆した書類の重要性
(1)裁判官が執筆した書物には、事実上の拘束力があります。
(2)裁判官が、執筆した書物の中で、過去の判例を分析してその結果を判決(裁判所)の考え方として発表します。他の裁判官がこれを尊重して、裁判所の考え方が生まれます。
(3)新しい種類の紛争が生まれたとき、はじめてこれを判断する裁判官は直感でこれを判断しなければなりません。そして、これらの多数の判決が出た時点で、過去の判例を分析してその結果を判決(裁判所)として固めていくわけです。
初期の判例はバラツキがあります。そこで、これらを後日一つの考え方としてまとめるやり方には合理性があります。
実務家として読んでおくべき専門書
(1)以下の裁判官が作成した書物は大切です(中村直人「訴訟の心得 」24頁)。
①最高裁の判決と、調査官解説
②判例タイムズの論文、判例タイムズ等に記載されている各判例の解説
③裁判官が執筆した書物
(2)現実論として、裁判所は他の行政官庁の公式見解も尊重をしま(中村 直人 、 山田 和彦「弁護士になった『その先』のこと。」66頁)。
①監督官庁のQ&A
②行政官庁のガイドライン(これらの解説本)
③立法担当者が執筆した書類
参考
中村 直人 、 山田 和彦「弁護士になった『その先』のこと。」60頁~
企業法務の弁護士として、どのような研鑽を積むべきか記載されています。