示談交渉のテクニック(証拠を交換する)
2023/04/04 更新
示談交渉と対話
(1)示談交渉は、対立する相手方との交渉です。対話は、対立する相手方との話し合いです。まさしく、示談交渉は対話です。
(2)示談交渉には、対話のテクニックが役立ちます。
示談交渉のテクニック(証拠を交換する)
①対立点を確認する。
対立点はどこか。逆に、同意できる点を確認します。
②相手方が、事実を誤認している場合に、こちらの手持ち証拠を提出して誤解を解けるか検討する。
証拠を提出するデメリットは手のうちをさらすことです。しかし、証拠を開示することで、相手方の誤解を解き、紛争を解決できる場合には開示するメリットがでてきます。
③相手方の主張について、相手方の主張を根拠付ける証拠があれば開示をお願いします。
相手方の主張を根拠付ける証拠があれば、こちらも依頼者を説得する材料になります。紛争の解決につながるので、先に開示してほしい、とお願いします。
④紛争の早期解決につながらない証拠
示談交渉段階で証拠を開示する目的は、紛争の早期解決です。示談交渉の解決につながらない証拠の開示は断ることになります。
示談交渉の実例
弁護士B
初めまして、弁護士Bです。
今回は、山田氏の代理人として、吉田氏の代理人である弁護士A先生に連絡させて頂きました。
弁護士A
初めまして、弁護士Aです。よろしくお願いします。
弁護士A
今回、ご連絡させて頂いたのは、A先生から「残業代の支払いとして100万円での解決金を提案する。」との通知書を頂いた件で、質問がしたくて連絡させて頂きました。
解説
連絡をした理由を端的に説明する。
話し合うべき議題を先に確認しておく。,
弁護士B
A先生の通知によれば、「残業代の支払いとして、総労働時間を分母として、割増率も0.5」とされています。これは歩合給だという主張でしょうか。
弁護士A
そのとおりです。
弁護士B
しかし、私どもが持っている雇用契約書によれば、固定給となっているので、計算式が違うと思います。
弁護士A
そうなんですか?
その資料の開示をお願いできますか。
弁護士B
会社も持っているはずの資料なので、開示について依頼者の不利益はありません。もちろん、OKです。
後日、ファックスします。
A先生も歩合給だご主張されるのであれば、歩合給だとする根拠資料の開示は可能でしょうか。
弁護士A
資料は存在しますので、一応、会社と相談しなければなりません。しかし、基本的にはOKです。
解説
証拠を提出するデメリットは手のうちをさらすことです。しかし、既に相手方が持っている証拠であればそのデメリットもありません。相手方の誤解を解き、紛争を解決できる場合には、積極的に開示していきます。
弁護士B
残業代の適正金額を算定するには、労働時間の算定が不可欠です。デジタコの開示をお願いできないですか。
弁護士A
既に、開示済みの証拠では、歩合給というこもあって、多めに残業代計算して解決金を計算しています。
証拠の開示が、紛争の早期解決にはつながるとは思えません。
弁護士B
こちらとして、残業代の支払額が適切か判断するには、労働時間を算定する資料が不可欠です。開示されないのであれば、訴訟になりますよ。
弁護士A
先生もご存じのとうり、デジタコを読むのは大変な作業です。労働審判の場でも実際にデジタコを読んだりはしません。もし、やるとすれば1日だけピックアップして概算する程度です。
労働時間について概算して解決するという姿勢でなければ、どちらしても訴訟になります。
こちらとしては、示談交渉段階で開示が必要な証拠だとは思っていません。
弁護士B
それだったら、訴訟します。
弁護士A
訴訟するか、示談交渉するかは、B先生の判断にお任せします。
ただし、弊所としては、示談交渉を拒否しているのではなく、示談交渉で話し合うには不要な証拠だとお話しているのです。
弁護士B
ご趣旨そのもは理解はします。
弁護士A
確認しますね。こちらは、歩合給の証拠を開示する。
B先生は、雇用契約書を開示する、ということですね。
弁護士B
了解しました。
弁護士A
お互いが資料を見て、解決金の妥当性を考えるということになるかと思います。
しかし、基本的にはこちらで一度提案していますので、B先生より妥当な額とその根拠を示して頂くという理解でよいでしょうか。
弁護士B
それでいきましょう。
解説
交渉(会話)はキャッチボールです。どちらが、宿題を持つのか明確にする必要があります。
これを確認しておかないと、時間が無駄になってしまいます。