反対尋問の実例(陳述書に記載のない事実を証人が証言した場合)
2024/02/23 更新
陳述書に記載のない、証人の証言
(1)主張書面にも、陳述書にも書かれていないような話が、主尋問でいきなり話をされるときがあります。
(2)「今まで出てきていない主張です。陳述書に記載のない事実を証言することは、反対尋問権を侵害する。」と異議を出しても、裁判所はこの異議を認めません。
反対尋問での対応
(1)争点の確認、新しい主張の確認、今までこれを証人の弁護士が主張しなかったことを反対尋問で確認します。
(2)そんな重要な事実であるのに、今まで証言しなかったことを指摘するものであり、「不合理な主張の指摘」に当たります。
実際のケース
弁護士A
「主尋問にて、Aさんは、『エンジンキーを差し置かなければ冷凍機能が止まってしまう。冷凍車については、エンジンキーを刺したままにしなければならない。したがって、冷凍車の停車中は車を離れることはできなかった。』と供述されていますね。」
証人A
「はい。」
弁護士A
「本件では、休憩時間の有無、停車時間のAさんの過ごし方が争点であることは理解されていますよね。」
証人A
「はい。」
弁護士A
仮に、「冷凍車については、エンジンキーを刺したままにしなければならない。したがって、冷凍車の停車中は車を離れることはできなかった。」ということが事実であれば、それは重要な話であることは理解できますよね。
証人A
「はい。」
弁護士A
「先ほどの話を以下、新主張と呼びますね。」
「新主張は、陳述書にも書かれていないですよね。」
証人A
「はい。」
弁護士A
訴状を示します。
「訴状の日付は、〇年〇月〇日と書かれていますよね。」
証人A
「はい。」
弁護士A
「〇年〇月〇日(訴状の作成日)から、本日(先ほどの尋問の日)まで、約2年の時間経過していますよね。」
証人A
「はい。」
弁護士A
「新主張は、Aの弁護士さんが作成された文書に書かれていませんよね。」
証人A
「はい。」
解説
(1)尋問までに2年ほどの時間がかかっている。相手方と相手方代理人は何度も打ち合わせをしており、重要な事実であれば、相手方弁護士が書き漏らすはずがないという経験則を前提にしている。
(2)証人の言い分の不合理な点を指摘するものであるが、実際には反対尋問せずに無視して、最終準備書面にて、信用性がない、と論じてもよいだろう。