お客様への説明と説得(3)
2024/03/02 更新
お客様への説明と説得
(1)専門家としては、Aの手法がよいと思うが、お客様としては、Bの手法を選択したいという場合があります。
(2)お客さんの説得に、イエス・バット法を使う方法があります。
(3)イエス・バット法では、相手の意見を受け入れた上で、説得をすることになります。
説得する前に、ワンクッションを入れるのがポイントです。
説明するまえに、質問する
(1)説明する前に、質問するのは基本的なテクニックです。
質問
「自己破産についてデメリットは無いというのはご存知ですか。」
「インターネットではどう書いてありましたか。」
質問
「自己破産の職業制限はご存知ですか。」
「インターネットではどう書いてありましたか。」
「ご職業は何をされていますか。」
「なるほど、そうなると、職業制限は問題ないわけですね。」
(2)説明する前に、質問する
専門家として一方的に説明しても、相手が理解できているかは分かりません。
ある程度、相手方が理解していると思われるケースでは、「●●は知っていますか。」と質問から先に始めるほうが適切です。
もちろん、間違っているところは訂正します。
説得するときの作法(質問法)
(1)説得するときの手順は以下のとおりです。
①専門家として、 お勧めすべき選択肢のデメリット、デメリットと、これをお薦めする理由を説明します。
②お客様は、別の選択肢を希望されました。
③「「◯◯はダメ」だと言われていることを知っていますか。」と聞きます。
お客様に回答してもらうことで、(お客様の選んだ)選択肢についてのリスクを自分で説明してもらいます。
これによって、お勧めの選択肢に誘導します。
(2)お客様の意見を否定することなく、お客様の言葉で結論を導く形をとります。お客様のお話を無視せずに会話を繋げることができます。
(3)仮に、それでも依頼者の意見が変わらないときには、以下の対応をします。
「専門家としては、①をお勧めすること」、「お客様には再考してほしいこと」、「専門家として、何度か説得することを許してほしいこと」を説明します。
(4)専門家として、お勧めしない選択肢を選ぶと、トラブルになります。
基本的には、専門家の意見が正しいことが多く、それ以外の選択肢を選んだ場合、依頼者は、深く理解できていないことがほとんどです。
依頼者が理解できていないのに、「お客様には説明済みである」「お客様が理解した上で選択している。」と信じることは、専門家としては失格です。
説得の実例
弁護士A
(1)お話をお聞きすると、任意整理よりも、専門家としては自己破産の方がよいと思います。
(2)依頼者Bさんとしては、それでも、自己破産をご希望でしょうか。
依頼者Bさん
はい。そうなります。
弁護士A
私達としては、お客様にベストな選択を説明する義務があります。
心理的な問題はありますが、「経済的なメリットだけを考えると、自己破産を選択したほうがよい。」と考えています。
弁護士A
「インターネットでは、自己破産にリスクは無い、と書かれているのことがあるのはご存ですか。」
「どのように書かれていましたか。」
依頼者Bさん
(依頼者Bが自分の言葉で説明する。)
弁護士A
「おっしゃるとおです。」
弁護士A
「自己破産の職業制限はご存知ですか。」
依頼者B
「自己破産のときには、仕事につけない仕事もあると聴きました。」
弁護士A
「ご職業は何をされていますか。」
依頼者B
「◯◯です。」
弁護士A
「なるほど、そうなると、職業制限は問題ないわけですね。」
弁護士A
「今、お持ちの財産はありますか。」
依頼者B
「何もありません。」
弁護士A
「念のために確認させて下さい。預金はありりますか。」
依頼者B
「預金で10万円ぐらいです。」
(省略)
弁護士A
「自己破産すると財産を失うわけですが、その点のデメリットもないわけですね。」
(省略)
弁護士A
「そうしますと、Bさん(依頼者)のお立場で、経済的なメリットを考えると、私どもとしては自己破産をお勧めします。」
解説
お客様の意見を否定することなく、お客様の言葉で結論を導く形をとります。
お客様のお話を無視せずに会話を繋げることができます。
最近は、よく調べてきているお客様も多く、このようなテクニックが使えます。
依頼者Bさん
「頭では分かっています。」
す。
弁護士A
「最終的な選択は、もちろん、Bさん(依頼者)にあります。」
「私は専門家であり、基本的には経済的な観点から、お客様に提案すべき立場にあります。したがって、やはり、「自己破産」をお勧めしてしまいます。」
弁護士A
「本日中に、どちからを選択しても必要はありまのでんで、1週間以内に回答を頂けますか。」
「また、専門家としてのお勧めは「自己破産」です。したがって、専門家として、何度か説得することになるかもしれませんが、許してください。」
お客様説が説得に納得しないとき
(1)お客様が説得に応じない場合はどうなるでしょうか。
(2)専門家がお勧めしない選択肢を選ぶと、多くの場合には、お客様にとって最終的に満足できない結果になります。実際には、お客様が「感情と理性の中で整理できていない」場合が多く、最終的にはお客様からのクレームになります。
(3)「説明をした上で、お客様が選んだ。」のだから大丈夫ということにはなりません。トラブルになるであろう案件として、その後はよりいっそう、慎重に対応することになります。