マイナンバー制度と憲法13条
2024/07/21 更新
マイナンバー制度と憲法13条
最高裁は、「憲法13条は、保障する個人情報をみだりに第三者に開示又は第三者に開示又は公表されない自由を保障している。行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー制度)は憲法13条に違反しない。」と判断しました。
最判令和5年3月9日
判例タイムズ1512号72頁
住基ネットと憲法13条
(1)住基ネットも、マイナンバーも、行政機関が、個人に番号を付与することで個人情報を管理するという意味で同じ問題を抱えていました。
(2)住基ネットについては、「憲法13条は、保障する個人情報をみだりに第三者に開示又は第三者に開示又は公表されない自由する。しかし、住基ネットは憲法13条に違反しない。」という最高裁がありました(最判平成20年3月6日、判例タイムズ1268号110頁)。
マイナンバー制度の仕組み
(1)マイナンバー制度がない時代では、税務署がある個人の預金を銀行に問い合わせるときに、名前と、生年月日、住所を伝えて、銀行等から情報をもらっていました。
この方式の場合には、銀行等も名前と、生年月日、住所の一致を確認する作業が発生します。時間とコストがかかる以上、税務署も、的を絞って情報の問い合わせをする必要がありました。
(2)マイナンバー制度があると、税務署がある個人の預金を銀行に問い合わせるときに、1234567番の預金残額を教えてほしい、とお願いすれば足ります。
理論上、ワンクリックで、行政機関が、あらゆる公的機関や銀行等が保有する個人情報を取得できることを可能にするのがマイナンバー制度です。
(3)マイナンバー制度前でも、行政機関が、公的機関や銀行に個人の情報を問い合わせることは可能でしたが、その作業は大変なものでした。
マイナンバーは、この作業を大きく軽減する制度です。理論上、ワンクリックで、行政機関が、あらゆる公的機関や銀行等が保有する個人情報を取得できることを可能にするのがマイナンバー制度です。
マイナンバー制度と、情報の分割管理
(1)マイナンバー制度では、個人情報を一括管理するデータベースを作るのではなく、各所が個人情報を管理し、必要な限りで、他機関が管理している情報を取得することになります。
(2)情報の分散管理は、二つの意味を持ちます。まず、各機関が個人から必要な限りで情報を取得するので、個人情報の目的外利用を防止できます。
次に、各機関が必要最低限の情報を持つことになるので、情報が流出した場合にも、そのリスクを必要最低限に抑えることができます。
解説
(1)住基ネットも、マイナンバーも、行政機関が、個人に番号を付与することで個人情報を管理するという意味で同じ問題を抱えていました。
(2)令和5年のマイナンバーの判例も、平成20年の住基ネットと同じ理屈で憲法13に違反しない、と判断されました。
(3)両判決では、憲法13条は、個人情報をみだりに第三者に開示又は第三者に開示又は公表されない自由を保障している、と認めています。
(4)両制度では、目的が正当で、制度の内容も手法もその目的の範囲を超えないと判断されています。
(5)なお、両制度でも、使われ方によっては目的外利用や情報流出の可能性があるが、法律でしっかりとした規制と管理体制があり、その違反を刑罰の対象としていること、情報の分散管理によって、これらのリスクを下げていることが憲法13条に違反しない根拠とされています。