【基礎知識】弁護士報酬と会計
2024/12/07 更新
会計業務
(1)会計の作業としては、①請求書の作成 → ②入金の確認 → ③会計ソフトへの入力が必要です。
(2)②入金の確認については、「消込(けしこみ)」という言葉があります。
これは、送った請求書が入金されているかを確認する業務をいいます。
(3)②入金の確認について、例えば、送った請求書をコピーしておき、ファイルに綴ます。
その後、入金があれば、一つ一つ、チェックを付けて入金を確認する、という作業をします。
発生主義と現金主義
1 発生主義(会計のルール)
(1)会計のルールとしては、例えば、30万円の請求書を送った段階で、売上30万円(売掛金30万円)と入力します。
(2)その後に、30万円の入金があったときに、「預金30万円」を入力し、かつ、「売掛金30万円の消滅」を入力します。
2 発生主義
(1)請求書を送った段階で売上を立てるので、発生主義と呼ばれる考え方です。
(2)会計のルールとしてはこの考え方が正しいです。
(3)①請求書の作成と、②入金の2度にわたって、会計ソフトに入力します。
(4)これが、正しい会計のルールです。
2 現金主義
(1)上記が正式なルールですが、例えば、30万円の入金があったときに、「売上30万円」と記載する方法もあります。
(2)この方法は会計のルールとしては間違っています。
(3)現金が入金された段階で売上を立てるので、現金主義と言われます。
(4)なお、この方法の場合には、会計とは別に請求書どおり、入金があるのか、消し込みの作業が必要になります。
税理士の立場で
1 東京地裁平成20年1月31日判決(平成17年(行ウ)395)
(1)上記判決では、「弁護士の着手金は、委任契約の締結した年に申告しなければならない。」と言われました。
(2)これを前提にすると、以下のように考えることになります。
①契約を締結していなくても着手金が入金されれば、売上として記帳する。
②契約を締結していれば、着手金の入金がなくても、契約の締結の時点で、売上として記帳する。
③契約を締結して、着手金の入金があれば、契約の締結の時点で、売上として記帳する。
ということになります。
(3)なお、弁護士の成功報酬も以下のように考えることになるでしょう。
①契約を締結していなくても、成功報酬が入金されれば、売上として記帳する。
②契約書上の「成功の条件」が成立した段階で、成功報酬の入金がなくても、
「成功の条件」が成立した段階で売上として記帳する。
2 請求書の発行
(1)契約の成立のタイミングと請求書を発行するタイミングはほぼ同じです。
(2)したがって、①請求書の作成と、②入金の2度にわたって、会計ソフトに入力することになります。
3 税務リスク
(1)発生主義でも、現金主義でも、納税のタイミングはずれますが、納税額はそこまで影響がありません。したがって、「会計上正しくないが、そこまでの税務リスクはない。」ということになります。
(2)しかし、現金主義で記帳していると、売掛金が常に0円となります。決算書を見れば正しい記帳をしていないことが一発で分かります。
(3)そこで、毎月の記帳は現金主義でやりながら、期末の月(例えば、個人事業主では12月が1年の最終月となります。)だけ、税理士が「記帳をやり直す。」という運用がされていることも多いです。
発生主義(会計のルール)で記帳しよう
1 発生主義(会計のルール)
(1)会計のルールとしては、例えば、30万円の請求書を送った段階で、売上30万円(売掛金30万円)と入力します。
その後に、30万円の入金があったときに、「預金30万円」を入力し、かつ、「売掛金30万円の消滅」を入力します。
(2)具体的には、①請求書の作成と、②入金の2度にわたって、会計ソフトに入力します。
2 会計ソフト
(1)「請求書を発行した段階で、会計ソフトに入力する」として、ひと工夫が必要です。
(2)なお、入金があったときに、会計ソフトに入力するのは簡単です。最近は通帳の入金を自動で記帳してくれます。したがって、「請求書を発行した段階で、会計ソフトに入力する」ことがネックになります。
3 トリガー(起点)
(1)業務を命じる立場では、「◯◯なときには、△△する。」という意味で、「どんなときに」を定義することは大切です。
(2)例えば、会計担当者を決めて、その人に毎回、「請求書をもっていって、入力してほしい。」では、モレが発生します。
弁護士事務所の場合には、みんながいろいろな業務を行っています。したがって、請求書を入力する業務が後回しになることは目に見えています。
(3)したがって、「請求書を発行したときに、入力する。」というトリガーはよくありません。トリガーの工夫が必要です。
4 解決策1(会計ソフトで請求書を作る。)
(1)最近の 会計ソフトには請求書作成機能が付いています。
したがって、会計ソフトを使って請求書を作成します。そうすると、自動的に、売掛金30万円を入力されます。
(2)したがって、請求書は会計ソフトで作るというのは一つの解決策です。
解決策2(月に1度、請求書を入力する。)
(1)解決策として、以下のようなオペレーションが考えられます。
(2)なお、下記の例では、全体像を記載しています。
オペレーション(1) (1)弁護士チーム 弁護士は請求書を作って、請求書を印刷してラックに入れます。 (2)事務局 事務局で、月に1回、その請求書を会計ソフトに入力します。 オペレーション(2) (1)会計の考え方では、発生主義なので、請求書を出した時点と、入金がの時点で二度、入力します。 (2)週に1回、事務局で、通帳(入金)を確認してもらいます。 (3)その入金があれば、事務局で、週に1回、その入金を会計ソフトに入力してもらいます。 |
(3)「月末のルーチン業務」とすることで、もれを防ぐ「指示」となるように工夫をしています。