尋問のテクニック(要約してから、具体的に聞く。)
2024/02/23 更新
尋問のテクニック
先に概略的な話をしてから、具体的な説明を求める形で聞く方法があります。
ケース1
弁護士の質問
「夫婦なのでけんかぐらいはしますよね。」
「山田さんが、家を出たのは、平成30年9月です。」「平成30年9月ごろに、起きた夫婦喧嘩について教えてもらえますか。」
ケース2
弁護士の質問
「山田さんは、平成30年に、刑事事件を起こして第三者に怪我をさせましたね。その具体的な内容を教えてもらえませんか。」
解説
「山田さんは、平成30年に、刑事事件を起こして第三者に怪我をさせた。」という事実が「争いのない事実」であれば、この質問の仕方は何の問題もありません。
では、これが証人が初めて口にする事実だった場合に、「山田さんは、平成30年に、刑事事件を起こして第三者に怪我をさせた。」と質問(誘導)してよいだろうか。
私見としては、これは許されると考えます。具体的な内容を、証人が自分の口で話すことになるので、不要な誘導になりえないからです。
もちろん、裁判官よっては、「その聞き方はよくない。」「誘導せずに聞いてください。」と訴訟指揮が発動されることが考えられます。
尋問のテクニック(要約した事実を聞いてから、細かく聞く。)
争いのない事実
細かい点には争いになるが、事件そのもが起きたことに争いがないときには、先に話したい事実を要約して聞いておけば、場面設定(いつ、どこで、何をしたときの話を聞くのか)が出来て、スムーズな質問ができるようになります。
× ダメな例
弁護士の質問
「証人がホテルの部屋にいるときに、突然警察官が入ってきたのですね。」
異議
「「突然」とは証人は発言していません。また、「突然」の意味も不明確で、誤導になります。」
弁護士の質問
「警察官は、ホテルの部屋に入ってくるときにノックもせず、カギを開ける音もさせず、声もかけずに、ホテルに入ってきたのですか。」
異議
「主尋問なので誘導せずに聞いてください。明らかに証言を誘導しています」
〇 適切な例
弁護士の質問
「警察官は、あなたが泊っているホテルに入ってきたのですね。」(争いのない事実)
証人
「はい。」
弁護士の質問
「警察官が入ってくる前ですが、ホテルの部屋入のカギは閉まっていたのでしょうか。」
証人
「オートロックなので閉まっていました。」
弁護士の質問
「警察官がカギを開けて部屋に入ってきたのでしょうか。それとも、証人がカギを開けたのでしょうか。」
証人
「私はカギを開けていません。」
弁護士の質問
「警察官は、証人がいる部屋に入る前に、部屋の中に入っている証人に「入りますよ」「カギを開けますよ」など何か声をかけたのでしょうか。」
証人
「私は、何も聞いていません。」
弁護士の質問
「証人は、警察官が部屋に入る様子を見ましたか。」
証人
「見ていません。」
弁護士の質問
「証人は、警察官が部屋に入る際に、警察官が歩く音を聞きましたか。」
証人
「聞いていません。」
弁護人の質問
「証人が、警察官に部屋に入ってきているのに気が付いたのは、警察官がどの位置にきたときですか。」
証人
「私の目の前にと来たです。」
弁護士の質問
「証人の証言を要約しますね。」
「警察官はカギを開けて部屋に入ってきた。証人は、警察官が「入ってよいか」という声を聴いていない。警察官が部屋に入る音も聞いていないし、その様子も見ていない。」ということですね。
証人
「はい。」
弁護人の質問
「証人の認識としては、証人がホテルの部屋にいるときに、突然、警察官が音を立てずにカギを開けて入ってきて、気が付いたら目の前に警察官がいた、ということでよいですか。」
証人
「そのとおりです。」
応用例(Aさんは〇〇と言っている。)
ケース1
弁護士の質問
「Aさんは、先ほどの証人尋問で「〇〇」(要約)と言っていたのですが、事実はそのとおりなのでしょうか。」
ケース2
弁護士の質問
「Bさんの陳述書には、「〇〇」(要約)と書いてあるのですが、もう少し詳しく説明してもらえませんか。」
「陳述書について間違いない。」と聞いた後では、争いのない事実として質問できます。
応用例(Aさんは、〇〇と主張し、Bさんは〇〇と主張する。)
弁護士の質問
「AさんがBさんに初めて会った時期について、Aさんは〇〇(要約)と主張し、Bさんは、〇〇(要約)と主張し、食い違っています。」「 実際は、どちらが正しいのでしょうか?。」
見解の対立そのものは、争いのない事実として質問できます。