強制執行手続の概論
2025/04/27 更新
判決と公正証書
(1)判決には、「Aさんは、Bさんに100万円支払え。」と書かれます。
(2)公正証書では、「Aさんは、Bさんに100万円を支払うことを約束する。」と書かれます。
(3)しかし、裁判所や、公証役場が、判決等の内容を実行してくれるわけではありません。
債権者の側で、債務者の財産を見つけて、強制執行の手続きが必要です。
送達証明の取得と、執行文の付与
(1)判決や公正証書(以下、「判決等」という。)にて、強制執行するには、送達証明の取得と執行付与の手続が必要です。
(2)送達証明は、判決等を債務者が受け取ったことを証明する書類です。
(3)執行文の付与とは、判決等について強制執行ができることを証明する書類です。
「例えば、判決で、◯月◯日が到来したら◯円支払え。」という内容であれば、その日が到来しなければ、その判決を執行できません。執行文は、このような条件をクリアーして執行できる、という意味を持ちます。
(4)送達証明の取得と執行付与の手続は同時に行うのが通常です。
判決と公正証書の違い
(1)判決の場合には、裁判所にて手続きを行います。
判決の場合には、訴訟記録を保管する裁判所にて手続きを行います。
(2)公正証書の場合には、公証役場にて手続きを行います。
公正証書を作成した公証役場(正確には、原本を保管する公証役場)にて手続を行います。
債権差押命令申立書
(1)実務的に、強制執行で多いのは、債権差押命令です。
(2)送達証明の取得と、執行文の付与ができれば、次に、債権差押命令申立書等の書類を裁判所に提出することになります。
(3)例えば、債権差押命令申立書を作成するのであれば、裁判所のHPを見ながら作成することになります。
(4)債権差押の仕組みとしては、裁判所から第三者債務者に対し「債権者に払ってくだしね。」という文書を出してくれるに過ぎません。
例えば、債務者のAがB銀行に預金を持っていたとします。B銀行は本来、Aにしか預金の払い戻しをしません。「AとB銀行だけ」の関係で考えれば、「Aは預金の債権者、B銀行は債務者」となります。したがって、B銀行を第三債務者といいます。
取立訴訟
(1)例えば、預金の差押えをした場合でも、裁判所から第三者債務者である銀行に対し「債権者に払ってくだしね。」という文書を出してくれるに過ぎません。
したがって、差押えをした債権者は、第三債務者に対し、任意で支払ってくれるのか交渉することになります。
(2)仮に、これで、第三債務者が任意で支払ってくれなければ、その後に、差押えをした債権者は、第三債務者に対し取立訴訟を提起する必要があります。
(3) 債務者のAがB銀行に預金を持っていたとします。債権者が、AのB銀行の預金を差押えました。この場合、AがもつB銀行に対する預金払戻請求権の譲渡を受けたのと同じような経済状態になります。
ざっくりとしたイメージとしては、取立訴訟は、債権譲渡のされた債権について、その債権の債務者が払ってくれなかった場合をイメージすればよいでしょう。