残業代の時効(消滅時効)の確認
2025/05/25 更新
時効
(1)実務では、時効をチェックします。
(2)まず、時効の更新にあたる行為をすると、依頼者に不利益になることがありえます。
(3)次に、時効の検討によって、問題の範囲を確認する必要があるからです。
例えば、残業代訴訟では、時効となっている賃金については検討する必要がありません。
残業代の時効(消滅時効)
(1)給与の支払日について、締め日と支払日があります。
「毎月月末締、翌月10日払」の会社では、「4月1日~4月末日分」の給与は「5月10日に支払い」となります。
(2)令和2年4月1日から、支払日が来るもの
時効は3年になります。(令和2年4月1日より、残業代の時効が「2年」から「3年」に延長されました。 )
(3)なお、残業代の時効については、さらに5年に延長予定です(時期は未定)。
事例(実際に計算してみよう)
1 事案
(1)令和6年6月27日に、「残業代を支払え。」との内容証明が届きました(・・・(ア)。
(2) 会社の給与は「毎月月末締、翌月10日払」となっています。
(3)社員は、令和1年5月1日(・・・(イ))に入社し、令和4年5月末日(・・・(ウ))に退社しています。
(4)いつから、いつまでの労働日分の未払残業の有無が問題になるでしょうか。
2 内容証明と訴状の提出日
(1)内容証明が会社に到達した日から、6ヶ月以内に訴状が裁判所に到達しているかチェックしましょう。
(2)内容証明等で請求することは民法150条の「催告」です。その請求から6ヶ月以内に訴状が裁判所に提出されたときは、時効は完成猶予となります(民法150条)。
逆に言えば、内容証明が会社に到達した日から、6ヶ月以内に訴状が裁判所に到達しいなければ、その内容証明は(時効を考えるうえでは)無効となります。この場合には、その内容証明がないものとして、①その次に送られてきた内容証明で時効を検討するのか、もしくは、②訴状が裁判所に提出された日で時効を計算することになります。
(3)内容証明(民法の催告)にて完成猶予の効果を検討するときには、内容証明等の請求が相手方に届いたときが基準日となります。
(4)これに対して、訴状が裁判所に提出されたときにも、民法147条1項1号の「裁判上の請求」となります。訴状が裁判所に届いた時点で、時効は完成猶予となります(民法150条)。
なお、時効の完成猶予の効果は、訴状が被告に届いたときではなく、訴状が裁判所に届いた時点に生じることに注意が必要です。
3 計算
(1)令和3年6月1日~同月末日の給与の支払日は、令和3年7月10日です。
↓ (3年後)
令和6年7月10日です。
(2)令和6年6月27日の内容証明は、令和6年6月10日に時効となる賃金の時効の更新に間に合いません。
逆に、令和6年7月10日に時効となる賃金の時効の更新に間にあっています。
(3)したがって、令和3年6月1日から、退職日(令和4年5月末日(・・・(ウ)))までの残業代が問題となります。
