陳述書の応用(陳述書と戦略)
2024/02/23 更新
陳述書
(1)陳述書は、証人等が、証言する予定の内容を記載した文書です。
(2)陳述書では、証人等が証言する内容をあらかじめ知らせるものです。したがって、以下のような陳述書は、不適切だと私は考えますが、実務上、通用している陳述書を紹介します。
自分が経験していること以外も記載された陳述書
(1)会社側の証人の陳述書では、証人が経験していることだけでなく、伝聞で聞いたであろうこともその人が経験したかのように記載されている陳述書を出す弁護士もいます。
(2)裁判の期日について、「陳述書では、証人が経験したこと以外の事実も記載されている。証人が、どの点まで認識しているのか、何を証言するのか不明確なので、陳述書を出し直してほしい。」と抗議しました。
(3)裁判所は、「その点は、反対尋問で追及することなので、陳述書の出し直しまでは不要である。」という回答をすることが多いです。
(4)この場合には、依頼者との間で、証人が何を認識しているのか、を確認したうえで、「〇〇については知らないですよね。」という形で反対尋問するしかありません。
立証趣旨に記載されている事実と、陳述書で陳述予定の事実が一致しない陳述書
(1)立証趣旨に記載されている事実と、陳述書で陳述予定の事実が一致しない陳述書が出てくることがあります。
(2)この点を指摘すると、相手方代理人が、「陳述書で事実を記載すると、言い訳をされるので、立証趣旨の事実については記載しない。」と説明しました。
(3)そこで、「証言内容が不明確であり、証人としての採用をすべきでない(必要性がない)。」との意見を出しました。
(4)裁判所は、「陳述書だけで、必要性を判断するものではない。反対尋問の準備の必要性は理解できるので、主尋問後に休廷を設けたい。」ということで対応をされてしまいました。
今までの書面(陳述書)で議論されていないことを言いだす主尋問
(1)陳述書に記載のない事実が、尋問で初めて出ると裁判官はその信用性を疑うと言われていますが(岡口基一「民事訴訟マニュアル 書式のポイントと実務 上巻」336頁)。
(2)しかし、今までの書面(陳述書)で議論されていないことを言いだす証人がいます。このときには、「陳述書には、このようなことを述べていなかったですよね。」と軽く指摘する程度で、対応しましょう。
理由を聞くのは、NGです。反対尋問対策として、理由を用意していることが多いからです。
今までの書面(陳述書)で議論されていないことを聞く反対尋問
(1)これは、反対尋問でお互いによくやる手法です。
(2)争点と無関係でなければ、何も聞いてもよいのが、反対尋問です。
(3)とくに、立証する証拠がなく、否認されたらどうすることもできない事実については書面で書くよりは、反対尋問で、「こういう事実がありましたよね。」と聞く方が有効だったりします。