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【フィードバックと受け手の作法】「仕事のミス」と言い訳の作法

2024/03/17 更新

「仕事のミス」と言い訳の作法

(1)ミスをしたときに、新人社員にとって「許される言い訳」を理解しておくことは大切です。
(2)日常生活では、ミスは謝れば終わります。しかし、仕事のミスでは、その原因について分析して、どう対応するのか説明する能力が必要になります。
(3)ポイントなのは、「自分の何がまずかったのか。」を見つけようとする姿勢です。
(4)人間は誰でも自分の責任を否定したくなります。しかし、少しでも、自分の責任を否定するとどうなるか。上司から見れば、「自覚の足りない部下」となって、永遠と説教を受けることになります。

事実を認める。

1 事実をまず認める。

上司
 「●●の書面の提出時期は、〇日で、本日は×です。」「Aさんは、営業部のリーダです。」
 「これは、間違いないですか。」

A氏
 「はい。」「●●の書面の提出時期は、〇日で、本日は×です。」「私が、営業部のリーダです。」

 ※ 責任を議論する前に、事実を認めて、論点を整理します。

2 「あやふやな回答」(ダメな回答)

A氏
 「仕事はほとんど完成しています。」
上司
 「仕事の完成状況を聞いているわけではありません。仕事が納期までに終わっているかを確認しています。」「そもそも、私もチェックしていません。やり直しの可能性があり、仕事がほとんど終わっているかどうか、を判断することもできません。」

原因を分析する。

(1)許される言い訳は、実は4つしかありません。

①「手順を意識できていないかった。」「手順を守れていなかった。」
②「手順の意味が分かりました。これからは、手順を守ります。」
③「定期的な進捗確認を怠りました。このため、タスクの発生を見逃しました。」
④「仕事がいっぱいでタスクもれが発生しました。タスク管理の方法を教えて下さい。」

(2)上司は、「●●の問題が二度と起きないように、どんなルール(手順)があればよいのか、一緒に考えましょう。」「そして、これらは一緒に守りましょう。」という質問をしています。
 聞かれているのは、再発防止に適切なルール(手順)の中身です。
(3)上司からすれば、この観点以外の弁明があると、「認識が甘い。」と注意をせざるをえなくなります。

①「手順を意識できていないかった。」「手順を守れていなかった。」

(1)「●●する場合には、××する。」という手順(ルール)を教える責任は上司にあります。新人社員がこれを見落とすのは当然です。
(2)上司は、部下の立場に立って、部下がつまずき易いところ「手順(ルール)」を教える責任があります。
(3)部下には、「自分で考えて、やるべき手順(ルール)に気付く。」責任があります。

よい回答
 「会議の書類を事前にチェクしてOKをもらいました。しかし、これを事前に参加者に配っていませんでした。」
 「会議の資料なので、前日までに、参加者に配った方が当然よいと思います。そこまで、気をまわして、事前にメール等で送るべきでした。」

ダメな回答
 「事前にメールで送るように、具体的な指示を受けれていません。今後は『事前に送れ』と連絡をしてほしいです。」

解説
(1)上司からすれば、「上司にミスがあろうが、なかろう」が、ミスがおきた以上は、上司は部下に注意をすべきなのです。なあなあで、注意しない会社は良いかい会社ではありません。
(2)腑に落ちないこともあるようでしょう。しかし、「考えれば分かったはずではないか。」と自問自答しましょう。そうしなければ、「言われたことしかできない人間」「仕事ができない人間」にしかなれません。

②「手順の意味が分かりました。これからは、手順を守ります。」

よい回答

上司
 「お客様の情報は、パソコンのここの部分に記載して下さい。」
 「例えば、別の人が見たときに、同じ場所にないと困ってしまいます。」

部下
 「確かに、そこに記載した方が便利ですね。これからはそうします。」

ダメな回答

上司
 「お客様の情報は、パソコンのここの部分に記載して下さい。」
 「例えば、別の人が見たときに、同じ場所にないと困ってしまいます。」

部下
 「私は、手書きですが、(物理的な)ファイルに記載しています。」

上司
 「記録をどこに記載するか統一しないと、みんなで共有できません。」
 「〇〇さん(部下)の意見は、どのようにすることを手順(ルール)にした方が、効率的だという訂正案でしょうか。」

部下
 「そういう意味ではありません。」

③「定期的な進捗確認を怠りました。このため、タスクの発生を見逃しました。」

よくあるケース
 「部下Aをやっていたが、手に負えない部分があって、上司がその部分を手伝って、部下Aに返した。しかし、部下Aは自分の仕事だという認識を失った。」
 「A氏、B氏、C氏複数人が関与すると、責任者意識が薄くなる。」
 「お客さんや、他のメンバーの対応待ちで放置状態になった。本来であれば、催促すべきであった。」

手順(ルール)
 これらも手順(ルール)の問題です。
 例えば、「各仕事の進捗を定期的にチェックすること」を手順(ルール)とすること、が考えられます。
 例えば、「新人が抱えている仕事を一週間に一度、上司と一緒にチェックする。」等の手順(ルール)として解消可能です。

ダメな回答

部下
 「山田さんからの回答待ちです。」

上司
 「回答を催促できましたよね。」「進捗管理も仕事のうちです。」

④「仕事がいっぱいでタスクもれが発生しました。タスク管理の方法を教えて下さい。」

手順(ルール)
(1)実際には、仕事がいっぱいになった場合にも、手順(ルール)での解決が可能です。
(2)例えば、「『期限内に終わらせることができない。』と思われる時点で、相談するべき」手順(ルール)を設計することも可能です。

よい回答

部下
「仕事がいっぱいになり、タスクを把握しきれていませんでした。」「タスク管理の方法について相談できませんか。」

上司
 「分かりました。どうやって、仕事を管理しているのか、見せてくれませんか。」

他責な言い訳

(1)言い訳で大切なのは、「自分の何がまずかったのか。」を見つけようとする姿勢です。
(2)人間は誰でも自分の責任を否定したくなります。しかし、少しでも、自分の責任を否定するとどうなるか。
 上司から見れば、「自覚の足りない部下」となって、永遠と説教を受けることになります。

「上司のAも同じミスをしている。私だけ怒られるのはおかしい。」(上司も同じミス)
 ⇒ 管理職の責任は部下の指導です。上司がミスをしたとしても、部下への指導をしない理由になりません。

「〇〇だと誤解しました。」(誤解の言い訳)
 ⇒ 本来の手順を守っていたかどうかが、問題です。誤解したかどうかは本来無関係です。

「私は、(手順と違う方法で)〇〇なので、××と処理しました。」(独自のルールの言い訳)
 ⇒ 会社のルールに従わない理由にはなりません。

「上司のAの指示が不明確である。」「指示はメールしてほしい。」(指示が不明確であるとの言い訳)
 ⇒ 指示が不明確であれば聞き返すべきである。また、上司としては同じ方法で、他の部下にも指示を出しています。基本的には、上司の指示が悪いというのは、言い訳になりえません。

ただひたすら謝って、誤魔化そうとする。(謝罪している、という言い訳)
 ⇒ 再発防止策を検討しない姿勢は、それ自体が許されません。

「〇〇さんの仕事だと思っていました。」(責任逃れの言い訳)
「仕事が多すぎで、どうしようもありませんでした。」(多忙の言い訳)
「予想外の出来事が起きました。」(予想外の出来事の言い訳)
 これらは、タスク管理や、催促するべきタイミングの問題であるから、手順の問題として処理可能です。

他責な言い訳の末路

上司
 「再発防止のために、どうすればよいと思いますか。」(上司の質問の罠)
  ※ 新人社員に再発防止策を聞いていることがミスリードです。

部下
 「指示が●●とも、△△解釈できる内容だったので、●●としました。これが原因です。」(部下の他責な言い訳)
  ※ 人間誰しも自分の責任は否定したくなるものです。「本来、どうすればよいのか。」を正確に理解していないからミスを起こしたのです。その者に説明を求めてれば、当然、不適切な回答が出てきます。


上司
 上司は、部下に対し「そのような誤解を生じる状況ではなかった。」「言い訳をするな。」と説教が始まります。

 (省略)

  

上司
 上司は、「●●のときには、●●すべきだった。しかし、△△してしまった。」「これが原因ではないでしょうか。」(上司の誘導と軌道修正)
 ※ 上司としては、再発防止策として、「部下に手順(ルール)を教えること。」へ話を戻そうとしています。

部下
 「そうではありません。指示が●●とも、△△解釈できる内容だったのです。」

 ※ 部下としては、自分の意見を無視されたという部下の気持ちにひっぱられた。

上司と部下のその後の会話
(1)上司と部下のその後の会話は、「指示が明確だったか、明確でなかった。」が争点になってしまいました。
(2)上司は「部下の気持ち(上司が部下の言い分を正当に評価していない、という思い)に気が付いていない。指示が明確であったかどうか、という状況を議論をしてしまう。

解決策
(1)本来的には、ミスの話し合いは、「●●の場合には△△する。」という手順の再確認である。それ以外に焦点を当てるのは無意味です。
(2)建設的な話し合いをするためにも、部下に対し「何を議論すべきなのか」「言い訳の仕方」を伝授するのが近道だと考えます。

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