示談交渉のテクニック(こちらの要求を伝える)
2023/03/24 更新
示談交渉と対話
(1)示談交渉は、対立する相手方との交渉です。対話は、対立する相手方との話し合いです。まさしく、示談交渉は対話です。
(2)示談交渉には、対話のテクニックが役立ちます。
示談交渉のテクニック(こちらの要求を伝える)
(1)示談交渉では、以下の事実を相手に説明するものです。
① こちらの要望(具体的な要望)
② こちらの要望が叶わない場合に、こちらがとる対応(予定)
③ ②の場合に、相手方に生じる不利益
④ ③を考えれば、①の要求を飲むことが相手方にとって利益になることです。
(2)なれないうちは、最初に、①②③④をメモしてから、交渉に臨んだ方がよいでしょう。
示談交渉の実例
弁護士A
初めまして、弁護士Aです。
今回は、山田氏の代理人として、吉田氏の代理人である弁護士B先生に連絡させて頂きました。
弁護士B
初めまして、弁護士Bです。よろしくお願いします。
弁護士A
今回、ご連絡させて頂いたのは、B先生から「300万円を支払え」という通知書を頂いているのですが、早期の低額での解決ができないのか、お聞きしたくて連絡させて頂きました。
解説
連絡をした理由を端的に説明する。
話し合うべき議題を先に確認しておく。
弁護士B
私どもとしては、通知書のとおり、300万円を請求しています。
弁護士A
もちろん、分かっております。
しかし、離婚の事案では慰謝料として200万円ぐらい、そして、求償権放棄ですと、100万円ぐらいが相場となります。
こういった金額での話し合いができるのか、お聞きしたくて、連絡させて頂きました。
テクニック
「① こちらの要望(具体的な要望)」を伝えています。
弁護士B
具体的な提案があれば、金額を言ってください。少なくとも、依頼者に説明は行います。
解説
(1)弁護士Bはこちらに先に金額を言わせようとしている。
(2)金額交渉は「金額を上げる立場」と、「金額を下げる立場」に分かれる。」弁護士Aは、金額を下げる立場であるから、100万円が妥当な金額だと考えれば、その下の金額(例えば、50万円)をいうことになります。
弁護士A
今回の案件は、慰謝料請求ですから不真正連帯債務です。したがって、弁護士B先生の依頼者が夫から回収すれば、私の依頼者はその分支払い額が減ります。
そう考えると、こちらはできるだけ長引かせるのが基本戦術となります。
また、私の依頼者は遠方ですので、現実的には訴訟費用の回収や、執行も難しいでしょう。
そうなると、かえって、弁護士B先生の依頼者に不利益ではありませんか。
テクニック
以下の②③④を伝えています。
② こちらの要望が叶わない場合に、こちらがとる対応(予定)
③ ②の場合に、相手方に生じる不利益」
④ ③を考えれば、①の要求を飲むことが相手方にとって利益になる
弁護士B
それは、もちろん分かっています。
解説
(1)弁護士Bのように中立的に対応せずに、「依頼者としては徹底的に戦うつもりである。」「一切、和解するつもりはない。」と回答してくる弁護士もいます。
(3)そのときの対応も同じです。和解案と、和解案を蹴ったときのリスク(回収の可能性はない。)と、相手方のリスクを文書に書いて送ります。
(4)文書で送れば、相手方弁護士は依頼者に報告します。
相手方の弁護士としては、後日、和解案の提案を蹴ったことが問題にならないように検討することが期待できるからです。
弁護士A
正直、今回の案件は、相場が明確にあるケースなので、「どちらが金額をいう。」という問題ではないと思っています。
なお、どうしても、「こちらから金額を言え」と言われたら、100万円が相場だなと思っても、50万円とかそういう数字を回答することになります。
どのように進めましょうか。
解説
金額交渉は「金額を上げる立場」と、「金額を下げる立場」に分かれる。」弁護士Aは、金額を下げる立場であるから、100万円が妥当な金額だと考えれば、その下の金額(例えば、50万円)をいうことになります。
弁護士B
それを回答されてしまうと、こちらの依頼者が「安すぎる」ということでトラブルになることも考えられます。私の方で一度、依頼者に感触を聞いてします。
弁護士A
確認になりますが、今回は、弁護士B先生より、依頼者と相談して、後日、私に電話下さると認識してもよいでしょうか。
弁護士B
それでいきましょう。
解説
交渉(会話)はキャッチボールです。どちらが、宿題を持つのか明確にする必要があります。
これを確認しておかないと、時間が無駄になってしまいます。