Q 尋問の基本を教えて下さい。(少年事件の裁判の質問から学ぶ)
2025/12/19 更新
少年事件と裁判官の質問
(1) 少年事件では、裁判官が少年に対し質問をします。
(2) 裁判官は、記録だけしか見ておらず、少年との打ち合わせもしないが、見事に尋問をします。
(3)私見ではあるが、この質問の仕方については学ぶことが多い。
よくある「弁護人」の被告人質問
1 初めに
よくある弁護人の被告人質問と比べてみよう。
弁護人
「被告人は、コンビニでお弁当を盗んだことは認めるでしょね。」
被告人
「はい。」
弁護人
「なぜ、コンビニでお金を払わずに、盗んだのですか。」
被告人
「お金がなかったからです。」
弁護人
「お店に迷惑をかけたことは分かりますか。」
被告人
「分かっています。」
2 私見
被告人が「はい。」としかしゃべっていないので何も伝わってこないのではないだろうか。
尋問のポイント
(1)尋問のポイントは、「①質問は短く。②質問の意図を明確に伝える。③細かく一個一個聞く。④誘導しない。」ということです。
(2)では、少年事件の裁判官の質問を例に考えてみましょう。
裁判官
「今回やったことは万引きになるのは分かりますか。」
少年
「はい。」
裁判官
「万引きしたことについて、どう思っていますか。」
少年
「良くないことだと思います」
裁判官
「今は、良くないことだと分かっているだね。」
「では、どんな人に迷惑をかけたのか分かりますか。」
少年
「家族とか、お店とか。」
裁判官
「お店にはどんな迷惑をかけたのか分かりますか。」
少年
「売り上げが減ってしまいます。」
裁判官
「お店は、商品を買って、その買った商品を売って差額で、利益を出すのでしょね。分かりますか。」
少年
「分かりますか。」
裁判官
「みんながお金を払わないと、お店はつぶれますよね。」
少年
「はい。」
裁判官
「お店は従業員に給与を払っています。」
「お店がつぶれたら、お店は従業員にお給料を払えないかもしれません。」
裁判官
「〇〇さん(少年)は、△△でバイトしていますよね。」
「働いたのに、お給料が払われなかったらどう思いますか。」
少年
「腹が立ちます。」
裁判官
「お店はつぶれないかもしれないけど、お金が減る分、店長さんのお給料が減るかもしれませんね。」
少年
「そうなりますね。」
裁判官
「今の話を踏まえて、もう一度、お店に、どんな損害が出たのか、自分の口で説明できますか。」
少年
「 」
解説
(1)「万引きがなぜ悪いか」というテーマ(大きいテーマ)から、お店の損害というテーマ(小さいテーマ)に絞って、質問をしている。
これが、細かく聞く、というテクニックです。
(2)また、聞き方としても、大きなテーマから小さなテーマに絞っていくことで、質問者の質問の意図が明確になっています。
(3)「どんな仕事をしていましたか。」という聞けば、仕事について聞いていることが分かる。「どんな」という言葉を使って、質問の意図を明確にしている。
(4)質問は短く、分かりやすい。
(5) 例えば、「お店はつぶれないかもしれないけど、お金が減る分、店長さんのお給料が減るかもしれませんね。」といのは合理的な推認であるから誤導ではない。
また、「今の話を踏まえて、もう一度、お店に、どんな損害が出たのか、自分の口で説明できますか。」と聞いて、少年に自ら語らせる工夫をしている。






