判例(公益通報に基づく調査について納得できないとして、会社の担当者を批判するメールを担当者に再三送ったことについて、解雇がみとめられた。)
2025/06/25 更新
事案
(1)社員Xは、人種差別によって自分が正当に評価されていない、と公益通報をした。
上司Aが、①から⑤の差別発言をした。
上司Aが、社員Xを正当に評価していない。
(2)会社は調査を行い、以下を説明した。
①から⑤のうち①の発言を確認できたが、それ以外は確認できなかった。
上司Aが、社員Xを正当に評価していない、ということも認められない、とした。
(3)なお、社員Xの年間報酬は一億円程度で、社員Xの職種(エグゼクティグヂレクター)としては、
2、3番目の成績だった。
(4)会社は、公益通報に基づく調査結果にについて社員Xに回答した。
(5)社員Xは、調査結果に納得できないとして、再調査を求めるとともに、会社の担当者(及び会社)を批判するメールを担当者に再三送った。
(6)会社は、社員Xに会社を批判するメールを送ること等をやめるように求めたが、社員Xはこれをやめなかったために、会社は、社員Xを解雇した。
判例
(1)裁判所は、社員Xが高額の報酬を得ていたこと、他の社員と比べても高待遇を受けており、人種差別を理由とする不当な評価はなかったと判断しました。
(2)加えて、社員Xが再三の公益通報をしたことや、会社の対応を批判したメールを送ったこと等についても、申告の目的、申告の真実性(真実相当性)、申告方法としての相当性を検討し、正当性を認め難いとしました。
(3)社員Xは、会社の担当者(及び会社)を批判するメールを担当者に再三送ったこと等については、担当者の業務を妨げ、事業に支障を生じさせる行為であるとして、解雇を正当としました。
東京地判令和6年6月27日
労判1326号14頁
解説
調査結果に納得できない場合の公益通報(会社の上司や経営陣に対する苦情申し立て)についても、公益通報社保護法の趣旨に基づいて判断されることを明確にした判例といえるでしょう。
参考
ビジネスガイド2025年7月86頁