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予防法務

判例(退職予定者が、社内のデータを大量にコピーしたことについて、不正競争防止法の「営業秘密」にあたらないものの、情報漏洩を理由とする懲戒解雇と退職金の一部不支給を有効としました。)

2025/03/08 更新

退職予定者と情報漏洩

(1)退職予定者が、競合他社に再就職が決まっており、会社のノウハウを持ち出すことはよくあることです。

(2)これを防ぐには、不正競争防止法の保護を受けれるレベルに情報管理を徹底すること、守秘義務契約等で、社員に情報漏洩をしないように教育や、約束をさせることが大切になってきます。

東京地判令和4年12月26日

概略

(1)退職予定が、会社が管理している仮想デスクトップのデータ(2.4GB)(A情報)と、会社が管理しているドロップボックスのエクセル(B情報)の情報を、退職予定者が個人で管理しているグーグルドライブに移し替えた。

(2)会社は、これを情報流出だとして、退職予定者を懲戒解雇して、退職金の一部を不支給とした。

(3)退職予定者は、引き継ぎに必要だったと考えて、データをコピーした(退職予定者が個人で管理しているグーグルドライブに移し替えた)と主張した。

判決と不正競争防止法違反

事情

(1)会社が管理している仮想デスクトップには、会社から貸与されていた特別なパソコン(シンクライアント端末)からしか侵入できないようになっていた。

 ドロップボックスも、特別なパソコンを使わないとアクセス出来ないようになっていた。

(2)会社は、3年毎にセキュリティ講座(Eーラーニング)の受講を義務付けていた。

(3)会社が管理している仮想デスクトップには、他雑な情報が入っていた。

判決

(1)不正競争防止法の「営業秘密」であるためには、その情報にアクセルできる人間を制限する等、その情報を厳重に管理したりしていることが必要です(秘密管理性)。

 秘密管理性が要求される趣旨は、対象情報を明確にして、社員においてこれが秘密情報であることを容易に理解でき、かつ、事後的に不足の嫌疑をかけられないように対応することを可能にするためです。

(2)しかし、情報A,、情報Bは、他の一般情報に埋もれる形で管理されており、密管理性を満たさない。

(3)したがって、情報A,、情報Bは、不正競争防止法の「営業秘密」にあたらない。

判決と懲戒処分

(1)判決は以下の事情がから、退職予定者の違法な目的(自己または第三者に使用させる目的)があったと、認定しました。

 退職予定者が、本件の会社に入社する際にも前の会社のデータを持ち込んだことが有ること

 コピーした(退職予定者が個人で管理しているグーグルドライブに移し替えた)データが引き継ぎに必要がないこと

と主張した。

(2)判決は、情報漏洩を理由とする懲戒解雇と退職金の一部不支給を有効としました。

東京地判令和4年12月26日

ビジネスガイド2024年10月号96頁以下

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