採用手続と個人情報保護法
2024/07/21 更新
採用手続と個人情報保護法
(1)採用手続において、企業は、履歴書を預かり、面接で個人的な事情を聞くことになり、個人情報を収集します。
(2)また、企業が採用手続を一部外注したり、犯罪歴等を調査会社のデータベースで一致するかどうか確認したする場合には、候補者から預かった個人情報(名前、住所、生年月日)を第三者に提供することになります。
(3)したがって、個人情報保護法の各手続を踏まなければなりません。
個人情報保護法の概説
個人情報保護法の概説は以下のとおりです。
(1)利用目的 利用目的を決めて、企業はそれ以外の目的で個人情報を使用してはいけません。 利用目的を決めて、これを公表することが必要です。 (2)取得 企業は不正な方法で個人情報を取得してはいけません。 (3)個人情報の管理 個人情報を適切に取り扱うための管理体制を構築することが必要です。 個人情報の取り扱いルールを定めて、社員教育を行うことが必要です。 (4)第三者への提供手続の整備 第三者に個人情報を提供する場合には、本人の同意を得ることが必要です。 (5)顧客からの請求に対する対応 顧客等は、事業者に対し自己の個人情報の取り扱いについて。開示、訂正、利用停止等の請求ができます。 企業は、これらの請求について適切に対応する必要があります。 |
企業としての対応
したがって、企業は以下の対応をしなければなりません。
(1)採用手続、選考基準を明確にて開示する(どのような個人情報を収集し、どのように利用するかを明示する。)
(2)採用試験の各結果を入力する採用評価表を作成して、どんな試験をしてどんな項目を調査するかを明確します。下記の基準を判断基準から外すべきです。
調査会社に調査を依頼する場合には、どんな項目を調査するかを確認が必要です。
(3)候補者はSNSを採用の目的で情報発信しているわけではありません。(候補者の)SNSを採用の適否に利用する場合(SNSの情報を取得する)場合には、(どのような個人情報を収集し、どのように利用するかを明記した)同意書を作成し、かつ、候補者から署名をもらう必要があります。
(4)企業が採用手続を一部外注したり、犯罪歴等を調査会社のデータベースで一致するかどうか確認したする場合には、候補者から預かった個人情報(名前、住所、生年月日)を第三者に提供することになります。また、これらの調査の場合には、本人の知らないところで情報を取得することになり、本人の同意した範囲内といえるか問題が生じます。
バックグランドチェックや、調査会社を利用した調査をする場合には、(どのような個人情報を収集し、どのように利用するかを明記した)同意書を作成し、かつ、候補者から署名をもらう必要があります。
【調査項目】職業安定法の指針(平成11年労働省告示141号)
職業安定法の指針(平成11年労働省告示141号)によって、以下の情報を収集することが禁じられています。
(1)人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項 (2)思想及び信条 (3)労働組合への加入状況 |
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/haken4/1a.html
【調査項目】公正な採用選考を目指して
厚生労働省は、「公正な採用選考を目指して」を発表して以下の事項について質問したり、情報収集しないように呼びかけています。
(1)本人に責任のない事項 (あ) 本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します) (い)家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など) (う)住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など) (え)生活環境・家庭環境などに関すること (2)思想及び心情(本来、自由であるべき事項) (あ)宗教に関すること ・支持政党に関すること (い)人生観、生活信条などに関すること (う)尊敬する人物に関すること (え)思想に関すること (3)労働組合への加入等 (あ)労働組合への加入(加入状況や活動歴など) (い)学生運動などの社会運動に関すること (う)購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること (4) 採用選考の方法について (あ)身元調査などの実施 (注:「現住所の略図等を提出させること」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります) (い)本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用 ・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施 |
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm
【調査項目】要配慮個人情報
(1)個人情報のうち、人種、信条、社会的身分、病歴、前科・前歴、犯罪被害情報は、プライバシー性の高い情報として、要配慮個人情報と言われます。
(2)個人情報保護法は、要配慮個人情報については、特に慎重な取り扱いを求めています(個人情報保護法第2条第3項)。
【調査項目】病歴(長期欠勤した事実)の有無や、犯罪歴
(1)病歴(長期欠勤した事実)の有無や、犯罪歴については、要配慮個人情報に該当し候補者に聞いてよいか、調査してよいか問題となります。
(2)しかし、厚生労働省の「公正な採用選考を目指して」でも、合理的な必要な健康診断の許されていますし、犯罪歴そのものの調査は禁じされていません。これらの調査は許されます。
参考
ビジネスガイド2022年1月号28頁以下
ビジネスガイド2024年8月号26頁以