株主総会の取消事由(招集手続・決議の著しく不当)
2024/09/06 更新
株主総会の取消事由(招集手続・決議の著しく不当)
(1)「株主総会の招集手続または決議の方法が著しく不当であるとき」には、株主総会の取り消しを請求できます(会社法831条1項1号)。
(2)「株主総会の招集手続または決議の方法が著しく不当であるとき」は法令違反はないが、全体的にみて、著しく不公正なときを意味します。
(3)上記訴えを提起できるのは、株主総会(の決議)の3ヶ月以内です。
(4)株主総会の取消し事由があっても、株主総会の内容ではなく、①その手続の違法にすぎず、②違法が重大ではなく、③決議の影響を及ぼさないときには、取り消しの訴えが認められないときがあります(会社法831条2項)。
会社法831条 1項 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から3箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第346条第1項(第479条第4項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。 一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。 二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。 三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。 2項 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。 |
「株主総会の招集手続または決議の方法が著しく不当であるとき」の具体例
「株主総会の招集手続または決議の方法が著しく不当であるとき」の具体例としては、以下のものあります。
①定款の定める定足数を満たしていなかった場合(最判昭35.3.15集民40号367頁)
②株主の出席が困難な時期を選んで株主総会を招集した場合 (大阪高判昭30.2.24下民6巻2号333 頁)
③株主総会の開催場所を当日に変更するとともに, 株主を警察に告訴して身柄を拘束させて、当該株主が株主総会に出席することができないようにして決議をした場合 (大阪地判昭 27.7.1 下民3巻7号909頁)
④暴行・脅迫により株主の発言又は議決権の行使を妨げて決議を成立させた場合(大決昭4.12.16新聞 3082号9頁)
⑤定刻より3時間余り遅れて開催された株主総会における瑕疵ある延期決議に基づいて開催された 株主総会で取締役の選任決議がされた場合 (水戸地下妻支判昭35.9.30下民11巻9号2043頁)
⑥公正な議事進行につき適正を欠く疑いのある者が議長になり、強引に議事を進行させ, 株主の発言を無視し、議題の説明もないまま株主に質疑討論の機会を与えず、賛否を拍手に求めるという不完全な評決方法を取った場合 (大阪高判昭 42.9.26判夕213号119頁)
⑦株主の修正動議が無視されるなどした場合 (大阪地判昭49.3.28 判夕306号187頁、大阪高判昭54.9.27判タ 399号45頁、最判昭 58.6.7 民集 37巻5号517頁、判夕500号111頁)
⑧株主であることは明らかであるのに、書類の形式的な不備を理由に株主総会に出席させず、議決権の行使もさ せずに総会決議がされた場合(札幌地判平 31.1.31判夕1467号249頁)
参考
判例タイムズ1522号123頁
「株主総会の招集手続または決議の方法が著しく不当であるとき」の概要が簡潔に説明されています。