任意整理を選択するべきケースとは?
2025/01/25 更新
このページを印刷任意整理とは
(1)借り入れ先が3社~5社程度で、利息をカットすれば、3年~5年間程度で完済できるときには、任意整理を行うことがあります。
(2)任意整理は消費者金融等に連絡して、利息のカットと5年以内の分割を個別にお願いして、各社と合意する手続です。
(3)どんなときに、任意整理を選択すべきでしょうか。
任意整理の見込みがあること
(1)借入先が消費者金融等であること
あくまで、任意整理は消費者金融等と合意して分割払いの交渉をすることになります。
したがって、破産されるよりも分割払いに応じた方が得であることが理解できる金融機関等でなければ、交渉が上手くいきません。
例えば、友人の借入や、個人事業主としての取引先への支払い等は、任意整理は難しいです。
(2)借入先が3社から5社であること
任意整理で解決できるか(全ての消費者金融等と合意できるか)は不確定です。また、借り入れ先が多数になれば、さらに全ての消費者金融等と合意できる確率も減ります。
(3)トータルの債務額について、3年程度で返済の見込みがあること
例えば、債務がA社からの借り入れと、B社からの借り入れの合計が180万円だとします。これを3年で返済するとなると、36ヶ月×毎月5万円で返済することになります。
これが家計の収支で支出できるかを考える必要があります。
破産手続を選択しない理由があること(その1)
(1)法律の専門家としては、依頼者が債務超過に陥っている場合には、破産手続を選択できるかを検討し、破産手続を選択できない場合に、任意整理(や民事再生手続)を検討します。理由は2つあります。
(2)一つめは、依頼者の経済的なメリットです。
破断手続では、破産してしまえば、その時点から借金を返す必要はありません。しかし、任意整理では、利息を除いた元本債務について分割払いする必要があります。したがって、完済まで5年程度かかることもあります。現実論として、任意整理をしたが、3年後に支払えなくなり、破産する人も多いです。最終的なゴールまで時間がかかり、かつ、再度、破綻するリスクがあります。
任意整理では、借金の元本を減らすことはできません。
(2)2つめは、債務整理の不利益は、破産と変わらないことが多いことです。
確かに、「破産」の方が世間的なイメージはより悪そうです。しかし、(信用情報が傷ついて金融機関等から融資を受けれなくなる)実質的な不利益は任意整理と破産では大きく変わりません。
任意整理を選択して借金を完済しても直ちに、その履歴が消えるわけではありません。完済後に5年~10年間、ローンを組んで住宅を購入することができません。ローンを組んで自動車を購入することができません。クレジットカード・ETCも使えなくなることがあります。
破産の場合には破産してから、5年~10年してから破産の履歴が消されれます。これに対して、任意整理の場合には、返済までに3年かかると、その完済から、5年~10年してから任意整理の履歴が消されることになります。
任意整理の方が、上記のような事故歴が長く残ります。
破産手続を選択しない理由があること(その2)
1 破産を選択できない理由があること
(1)破産手続には、以下のような制約があります。以下のような場合には破産手続を利用できずに、任意整理(や民事再生手続)を検討します。
2 財産
(1)持ち家、自動車、生命保険など、どうしても残したい財産があるときには、任意整理(や民事再生手続)を検討します。
(2)破産手続は、一定額以上の財産を全て現金化して、債権者に平等に支払って債務を免除してもらう手続きとなります。
破産手続では、持ち家、自動車、生命保険、預金等総額99万円以上の財産を失うことになります。
3 職業の制限
(1)破産手続きをしてしまうと、お金を扱う仕事について一定の制限がされます。 生命保険外交員や、警備業者等があたります。
(2)このような場合には、任意整理(や民事再生手続)を検討します。
4 特定の債権者への弁済
(1)破産手続きを行う場合、債権者への返済は法律が定める手順・割合によって支払うべきとなり、特定の債権者にだけ弁済をすることは許されません。友人の借金だけを優先して返済したり、昔ながらの取引先の買掛金のみ優先して支払うことは許されません。
(2)このような場合には、任意整理を検討します。
(3)なお、民事再生手続も裁判所が関与する手続きなので、特定の債権者にだけに返済することはできません。
5 特定の債権者への通知をしてほしくないとき
(1)破産手続きを行う場合、債権者への連絡が必要となります。特定の債権者には、いつもどおり返済するから連絡しないでほしい、ということもできません。
(2)このような場合には、任意整理を検討します。(3)なお、民事再生手続も裁判所が関与する手続きなので、特定の債権者にだけに連絡しないこともできません。
6 イメージもあって破産手続をしなくないとき
(1)親族や、家族の手前、どうしても、「破産」手続を選択できないこともあります。
(2)このような場合にも、任意整理(や民事再生手続)を検討します。