Q 相続放棄した相続財産の中に空き家等がある場合に、地方自治体から空き家の撤去を求められた場合にどうすべきか。
2025/11/22 更新
このページを印刷改正前の民法940条1項
(1)民法改正の民法940条1項の「相続の放棄をした者であっても、その財産を管理する義務がある。」という条文を根拠に、地方自治体が相続放棄をした者に対しても、倒壊しそうな建物の修理や解体を求められる事案が存在しました。
(2)これに対しては、相続放棄をした者に義務を課すことは相続放棄の趣旨に反するという批判がありました。
| 民法940条(相続の放棄をした者による管理) 1項 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。 |
改正後の民法940条1項
(1)相続の放棄をした者であっても、その財産を①占有する者は、②保存する義務を負う、と訂正されました。
(2)①占有する者に定義されたのは、利用していない空き家について義務を負わないことを明確にしたものです。
(3)「管理」する義務から「保存」する義務に代わりましたが、これは実質的な変更はありません。
保存する義務の内容としては、(ア)財産を滅失させ、又は損傷する行為をしてはならないことに加え、財産の現状を維持するために必要な 行為をしなければならないことを意味するとの考え方と、(イ)財産の現状を滅失させ、又は損傷する行為をしてはならないことのみを意味するとの考え方があります。
(法務省の「財産管理制度の見直し(相続の放棄をした者の義務))
| 民法940条(相続の放棄をした者による管理) 1項 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。 |
相続放棄した相続財産の中に空き家等がある場合に、自治体から、その空き家の撤去を要請された場合にどうすべきか。
1 占有していない場合
①相続放棄をして、かつ、②その財産を占有していない場合には、その点を指摘して義務がない、と回答すべきであろう。
2 占有(利用)している場合
(1)①相続放棄をしているが、何らかの理由で、②その財産を利用している場合には、「保存」の解釈としてそこまでは求められていないという立場を前提にしつつも、自治体と交渉していくことになろう。
(2)私見としては、利益を得つつ、義務だけ免れるのは難しいと考えます。
参考
ザ・えすあ~る令和7年11月号13頁以下






