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判例(収益不動産について抵当権が設定され、受贈者が被担保債務について免責的債務引受をする代わりに、当該収益物件について贈与を受け、被担保債務を当該収益物件の賃料から支払う場合の特別受益)

2025/01/28 更新

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事例

(1)収益不動産について抵当権が設定され、受贈者が被担保債務について免責的債務引受をする代わりに、当該収益物件について贈与を受け、受贈者は被担保債務については、当該収益物件の賃料から支払った。

(2)他の相続人は、実質的に負担がないから、単純贈与として計算されると主張した。

決定

(1)このスキームの場合、確実に賃料等の収入があるかは不明確であり、負担がないともいえず、負担付贈与とります。

(2)負担付贈与の場合には、目的物の価格から債務を控除することになるが、一括返済するかどうか受贈者の選択であるから、控除できる債務は引受債務の元本のみとなります。その後に発生する利息等については控除されません。

(3)贈与に受け取る賃料等の収入は考慮しません。

(4)贈与時の財産の価格と、相続時の財産の価格が違うことがあります。例えば、単純贈与の場合、その財産の評価は相続開始時を基準に算定します。

 これに対して、負担付贈与の場合には、特別受益部分は、「贈与時の財産の価格から、控除できる債務は引受債務の元本を控除した」額となります。

 したがって、負担付贈与の特別受益の額は、相続開始時における贈与の目的物の価格に、特別受益部分の割合を乗じた額となります。

 令和5年12月7日東京高決

 判例タイムズ1527頁

解説

1 負担付贈与の場合の特別受益の計算

(1)本決定は、負担付贈与の場合の特別受益の計算方法を明確にしました。

 例えば、贈与の時点で、贈与された不動産の価格が300万円、負担する債務が100万円だったとします。

 そうすると、特別受益部分は、300万円-100万円=200万円です。

(2)相続の時点で、贈与された不動産の価格が600万円だったとします。

 負担付贈与の特別受益の額は、600万円 × 200万円/300万円 = 400万円で計算します。

2 特別受益の持戻し

(1)共同相続人の一人が生前に、贈与を受けている場合に、特別受益として持ち戻すことになります。つまり、贈与された財産の価格を相続財産に加算し、各共同相続人の相続分を確定します(一応の相続分)。

特別受益を受けた相続人は、一応の相続分から贈与額を控除して、その残額が具体的な相続分となります(民法903条1項)。

(2)例えば、被相続人の生前の財産が100万円であったとします。

 被相続人が生前に相続人の一人に400万円を贈与しました。

 相続財産の計算上は、贈与分を相続財産に加えて、500万円が相続財産であると計算するのが公平というのが、特別受益の持ち戻しです。

3 持ち戻しの免除

(1)被相続人が贈与の際に、「持ち戻しの免除」の意思を明確にしていた場合には、相続分の計算で上記の計算をしなくてよくなります。

(2)負担付贈与の特別受益が争われた場合には、価格の計算だけでなく、「持ち戻しの免除」も問題となります。

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