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子供が拒否した場合の、子供の引き渡し義務と間接強制(2)

2024/08/12 更新

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事案

(1)別居している夫婦に関し、母親の申立てにより「監護権者を母親とする。」「父親は母親に対し子供を引き渡せ」と命じる審判が下った。

(2)父親は引き渡しに協力しようとしたが、子供が嫌がって、引き渡すことができなかった。

(3)母親は、父親に対し、子供を引き渡さないときには、1日2万円を支払えとの間接強制の申立てをした。

判決

 判決は以下の判断をしました。

(1)家庭裁判所の審判等により子の引き渡しを命じられた者は、子の引き渡しを実現するように努力しなければならない。

(2)父親は母親と子供が会う機会を2回ほど作り、その際に、子供が「監護権者のもとに行きたくない」という明確に拒絶する意思を明確にした。
 しかし、間接強制の申立てがあれば、「(家庭裁判所の審判により子の引き渡しを命じられた)父親は、(監護権者である)母親に子供を引き渡す義務があり、子供を引き渡さないときには、1日円2万円を支払う義務を負う義務を負う。

 最判令和4年11月30日

 判例タイムズ1506号33頁

解説

1 親権者、監護権者の変更

(1)離婚事件等では、夫婦の一方が、他方に対し、「自分が監護権者である。」「監護権者である自分に対し子を引き渡せ。」と子の引き渡しを求めることがあります。

(2)家庭裁判所は、子供を監護する者がどちらが適切なのかを判断して、親権者、監護権者を決めます。

2 「子の引き渡し」の強制執行

(1)家庭裁判所の審判等により子の引き渡しを命じられたが、他方の親が引き渡しに応じない場合には、「子の引き渡し」の強制執行が問題になります。

(2)改正民事執行法によれば、執行官による子の引渡しの手続をする前に、原則として、間接強制の方法による子の引き渡しの手続(子供を引き渡さないときには、1日2万円を支払えと命じる手続)をしなければならない(民事執行法174条1項2号)とされています。

(3)なお、人身保護法の要件を満たせば、人身保護法による「子の引き渡し」を検討することもできます。
 

3 子の引き渡しの間接強制

(1)「子を引き渡す」旨の内容の調停が成立していること、もしくは、子の引渡しを命じる審判が確定していること等が必要です。

(2)子の引き渡しの間接強制には、家庭裁判所への申立てが必要です。

 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/vcmsFolder_983/vcms_983.html

4 本件の問題点

(1)本件では、(家庭裁判所の審判により子の引き渡しを命じられた)父親は母親と子供が会う機会を2回度ほど作り、その際に、子供が「(監護権者である)母親のもとに行きたくない」という明確に拒絶する意思を明確にしました。

(2)この場合にでも、「(家庭裁判所の審判等により子の引き渡しを命じられた)父親は、(監護権者である)母親に子供を引き渡す義務があり、子供を引き渡さないときには、1日2万円円支払う義務を負う(間接強制)」のか、が問題になりました。

(3)そもそも、子供の成育環境の問題でありますから子供の意思だけでは決めれません。子供が拒否の意思を示したとしても、家庭裁判所の審判等により子の引き渡しを命じられた者は、子に対し説得する義務があることになります。

(4)したがって、子供が拒否したという事情があっただけでは、間接強制の申立ては権利濫用になりません。

(5)これに対して、庭裁判所の審判により子の引き渡しを命じられた者は、子供が引き渡しに拒否している場合には、監護権者の変更を申し立てる。もしくは、請求異議の訴え等の手続をするべきである、ということになります。

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