Q 「日本知的財産仲裁センターの調停」について教えて下さい。
2025/08/03 更新
このページを印刷日本知的財産仲裁センターの調停

「日本知的財産仲裁センターの調停」とはなんですか?

日本知的財産仲裁センターの調停は、日本弁護士連合会及び日本弁理士会により運営される、知的財産の紛争を専門に取り扱う民間の調停制度です。
取り扱う紛争の範囲
日本知的財産仲裁センターの調停が取り扱う知的財産の紛争は以下のとおりです。
取り扱う知的財産の紛争の一例
- 産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)が関係する紛争著作権
- 不正競争防止法関連の紛争
- ドメイン名に係わる紛争の他
- 営業秘密
- ノウハウ
- 種苗の育成者権
- 半導体集積回路の回路配置に関する法律の回路配置に関する権利に係わる紛争
…など
知的財産権に関係する事件であれば、調停の申立ができます。
調停手続の場所
(裁判所が運営する)知財調停は、東京地方裁判所または大阪地方裁判所にしかありません。
これに対して、日本知的財産仲裁センターの調停は、東京本部、大阪支部、名古屋支部、札幌支所、仙台支所、広島支所、高松支所、福岡支所にて手続きができます。
調停手続は、弁理士会館、弁護士会館、センターの名古屋支部、関西支部、各地の支所 その他センターもしくは仲裁人が指定する場所でおこなわれます。
また、当事者双方の同意があれば、電話会議、TV会議も活用できます。
相手方の出席
調停は話し合いの手続きであり、相手方が欠席等すればそれで終了していまします。
つまり、相手方が調停手続に出席してもらう姿勢をもってもらわなければ話が進みません。
相手方が調停に参加する場合(もしくは、参加してもらえそうな場合)に知財調停を申し立てることになります。
申立の費用
申立の費用は以下の通りです。
申立時に、申立人は、申立手数料として47,620円(+税)を納付する必要があります。期日手数料として、当事者は、各47,620円(+税)を納入する必要があります。
和解が成立した場合には、当事者に、和解契約書作成・立合手数料として各142,858円(+税)を納入する必要があります。
なお当事者の利益が著しく大であると認められる場合には、上記の金額が、285,715円(+税)までを限度として増額される場合があります。
また当事者の一方の側の主張に特に時間がかかった等の特段の事情がある場合には、当事者の意見を聞いた上で、上記の手数料の一方の当事者の納付額が、47,620円(+税)までを限度として他方の当事者の納付額に変更されることがあります。
調停の特徴
①専門性
調停を運営する調停委員は、知的財産の経験豊富な弁護士、弁理士等になります。
知財財産の専門家が見解を示しながら、調停を運営することから、専門的な知見を反映した上での解決案が示されることになります。
②早期解決
調停では、解決までに3回程度を想定しています。
これまでの解決例では、調停の場合、平均期日回数は4回(中央値は4回)、最短期日回数は2回となっております。
調停の欠陥
調停手続ですので、当事者のどちらかが調停案に納得しなければ、解決しません。
その場合には、訴訟等で初めからやり直さなければならなくなるリスクがあります。
したがって、①調停案(見込み)を正確に予想し、②依頼者とこれに納得できそうかどうか、②相手方も、その案に納得しそうかどうか、を予想する必要があり、専門家としての力量が大切になります。
参考
自由と正義 2023年4月号8頁以下