判例(共同相続人の一人が、被相続人の死亡により死亡退職金を受け取っていたが、特別受益に準じた持ち戻しを否定された事案。)
2023/02/27
判例
共同相続人の一人が、被相続人の死亡により死亡退職金を受け取っていた。
(生命保険以外の)遺産が459万円で、がん保険で2100万円の支払いを被相続人の妻が受け取った。
保険料は月額1万4000円であり、がん保険は妻の生活費を支えるためのものであることを考慮して、特別受益に準じた持ち戻しをしない、と判断された。
令和4年2月25日広島高裁決定
判例タイムズ1504号115頁
特別受益の持戻し
共同相続人の一人が生前に、贈与を受けている場合に、特別受益として持ち戻す場合には、その贈与された財産の価格を相続財産に加算し、各共同相続人の相続分を確定します(一応の相続分)。特別受益を受けた相続人は、一応の相続分から贈与額を控除して、その残額が具体的な相続分となります(民法903条1項)。
共同相続人の一人が、被相続人の死亡により死亡退職金を受け取っていた場合
(1)最判は、「共同相続人の一人が、被相続人の死亡により死亡退職金を受け取っていた場合、著しい不公平があると認めると特段の事情がある場合には、特別受益に準じて持ち戻しを行う。」と判断しています最判平成16年10月29日民集58巻7号1979頁、判タ1173号199頁)。
(2)保険金額が遺産総額の3分の1を超える事案においては特段の事情を肯定する方向で検討する必要があるという見解もあります(判例タイムズ1504号116頁)。
(3)死亡退職金の受取人が、被保険者の配偶者や、病気等により独立した生活を営むことが困難な子供である場合には、被相続人の死亡後の生活費あてることを予定されているとい側面があり、特段の事情が認められないという考え方もあります(山城司「Q&A 遺産分割事件の手引き」256頁)。
参考
判例タイムズ1504号115頁以下
共同相続人の一人が、被相続人の死亡により死亡退職金を受け取っていた場合の取り扱いについて簡単に説明されています。
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