契約不適合責任(ペットの売買)
2024/11/27 更新
このページを印刷契約不適合責任(ペット)
(1)販売したペットが、病気であった場合に、売主は責任を負うのか。
(2)販売した目的物が契約の内容に適合しないものであるときは、売主は、契約不適合責任を負います。
(3)その場合に、売主は契約の内容どおり、再度履行してほしいという追完請求(民法562条)、契約どおりでないから減額してほしいという減額請求(民法563条)、損害賠償請求の義務を負い、買主は契約の解除ができます(民法564条)。
(4)しかし、売買契約に、何ら病気を発症していなかったとしても、買い主は責任を負うのか問題となります。
- 民法
- 第562条 買主の追完請求権
1 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
第563条 買主の代金減額請求権
1 前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前3号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第1項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
第564条 買主の損害賠償請求及び解除権の行使
前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。
第565条 移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任
前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。
令和5年12月5日東京地裁
(1) 業者によるペットの販売について、 動物の健康及び安全の保持 等に関する事項を定める動物愛護法及びこれに基 づく環境省令の規定があります。
(2)動物愛護法21条1項は、動物の販売業者その 他の第一種動物取扱業者は、動物の健康及び安全 を保持するとともに、生活環境の保全上の支障が生ずることを防止するため,その取り扱う動物の 管理の方法等に関し環境省令で定める基準を遵守 しなければならないと規定する。
そして、 第一種 動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う 動物の管理の方法等の基準を定める省令(ただ し,令和4年環境省令第16号による改正前のも の) 2条は,上記の規定を受けて, 第一種動物取扱業者のうち販売業者は、①販売する動物の疾病 の予防, 寄生虫の寄生の予防又は駆除等の日常的 な健康管理を行い (4号口)、②当該動物が疾病 にかかった場合には速やかに必要な処置を行わなければならず (4号へ),、③2日間以上その状態 (下痢,おう吐,四肢の麻痺等外形上明らかなも のに限る。) を目視によって観察し、 健康上の問 題があることが認められなかった動物を販売に供しなければならない (7号) 旨を規定する。
(3)そうすると、本件売買契約が締結された当時の販売業者が、たとえ寄生虫に感染している動 物を販売したとしても、上記1~3を遵守し、外形上健康状態に問題が認められなかったのであれば、取引上の社会通念に適合する品質 (健康状 態)を備えていない動物を販売したものとまではいい難い、つまり、販売業者(売主)に責任はない、としました。
令和5年12月5日東京地裁
判例タイムズ1525号193頁