契約書の写しと原本
2024/09/03 更新
このページを印刷契約書の写し
(1)AさんとBさんが契約書を作ります。
(2)Aさんが、契約書の原本を保管します。
(3)Bさんが、契約書の写し(のコピー)を保管します。
このように不動産取引等では、契約書に貼り付ける収入印紙を節約するために、契約書の原本は1通だけを作成し、他方はコピーしか保管しないことがよくあります。
Bさんは、契約書の写し(のコピー)だけでも大丈夫なのでしょうか?
原本がないリスク
契約書の写し(のコピー)には、偽造される可能性があり、その分だけ信用力が落ちます。
例えば、100円の売買契約書を100万円に変更して、コピーをとることができます。
原本の契約書であれば、修正液で修正されていないか見れば分かります。
契約書の写し(のコピー)には、偽造される可能性があるということです。
なお、契約書の部分的な変更を以下では、偽造と書きます。
現実的な問題
理論上、契約書の写し(のコピー)には、偽造される可能性があり、その分だけ信用力が落ちます。
しかし、現実世界では、契約書が偽造されるリスクはほとんどありません。
なぜなら、契約書を偽造しても、相手方が原本を持っている可能性があり、契約書の偽造がバレる可能性があります。
例えば、通常の取引では、値段交渉等をします。そのため、メール等のその他の証拠が存在します。したがって、すぐバレるような嘘をつかないからです。
裁判ではどうなるか(原本VS写し)
(1)Aさんが、100円と書かれた契約書の原本を証拠として提出した。
(2)Bさんが、100万円と書かれた契約書の写しを証拠として提出した。
契約書の写し(のコピー)には、偽造される可能性があります。
この場合には、(他に証拠がない、という前提にはなりますが)契約書の原本が正しいだろう、ということになります。
なお、本件のような裁判はほとんどありません。
裁判ではどうなるか(写しVS何の証拠もない)
(1)Aさんが、100円と書かれた契約書の写しを証拠として提出する。
(2)Bさんが「契約書の写しには何の証拠能力もない。」と主張する。
この場合には(あくまで他の証拠がないという前提になりますが)、写しとはいえ、唯一の証拠である契約書の写しが正しいだろう、ということになります。
理由は、契約書の偽造までをする人はいないだろうという経験則、(写しとはいえ証拠であり)証拠を重要視すべきであること、例えば、Aさんの主張が正しいのに、Bさんがゴネで証拠を出さないだけの可能性があること(本来であれば、契約書があるはずなのに、これを出さないこと(事実)も一つの証拠であること)等が理由となります。
実務上、このような主張はよくあります。
例えば、通常の取引では、値段交渉等をします。そのため、メール等のその他の証拠が存在します。
したがって、実際の訴訟では、これらの周辺の証拠を積み上げて事実がどうか判断されることになります。
現実的な対応
1 概要
契約書の写しだけを保管することにはリスクがあります。しかし、現実問題として、そのことが問題になることはほとんどありません。
では、どうやってバランスをとるべきでしょうか。
会社内でのルールを定めることが必要になります。
2 対応方針
取引額の大きな契約は原本で契約して、原本を保管する。という取り扱いがありえます。
契約時に一緒に契約書を口に出して読んで、それを録音しておく方法があります。契約書以外の証拠で、契約書の内容を証拠化する方法です。
契約の前後で、メールで契約書を(PDFにして添付ファイルに添付して)送っておくのも有効です。
メールそのものは偽造できません。したがって、メールを残しておけば、後日、これらのやりとりを見れば、契約書の偽造の可能性があるのか判断できます。
契約書に頼らず、大事なことはメール等で確認することが考えられます。
以下のようなメールを送ります。これで、OKと返事があれば、大事なことは証拠化できます。
メールの例文
契約概要 リンゴを売買する
個数 100個
金額 一個 100円(税別)
品質 別紙のどおり(品質の要項を別途作成しておく)
納品場所 △△
契約書以外に、メール等で契約内容を残しておくことが証拠になるのですね。
「言った。」「言わない。」等のトラブルを避けるためにも、このような防衛策は大切です。