判例(管理者が原告として、共有部分に関する損害賠償請求権を提起し、区分所有権が転売された場合、転得者(訴訟後に、区分所有者になった者)に帰属する損害賠償請求権について訴訟追行権を有する)
2024/09/09 更新
このページを印刷区分所有法の共有部分
(1)区分所有法の「専有部分」は、住居、店舗、事務所、倉庫など、物理的に独立し、かつ独立して利用できる部分です。
(2)排水管、外壁、屋根、玄関、ロビー、機械室、エレベーターは、共有部分です(法定共有部分)。
(3)集会室、倉庫、駐車場、管理人室などは、規約により共有部分とすることができます(規約共有部分)。
共有部分と管理人(管理組合)の管理権
(1)集会の決議で選任された管理者(民法第252条の2第1項、区分所有法26条2項)や、管理組合法人(区分所有法26条6項)は、共有部分に関する管理権を有します。
(2)共有部に関する損害賠償請求権は(過分債権)であるから、各区分所有者が共有持分に応じて行使できる。つまり、同請求をする際に、各区分所有者は原告となれます。
(2)また、集会の決議で選任された管理者(区分所有法26条2項、4項)や、管理組合法人(区分所有法26条6項、8項)も、共有部分に関する損害賠償請求権をする際の原告となることもできます(任意的訴訟担当)。
管理者の訴訟追行の範囲
(1)管理者(区分所有法26条2項、4項)や、管理組合法人(区分所有法26条6項、8項)が、共有部分に関する損害賠償請求権をする際の原告となりました(任意的訴訟担当)。
(2)訴訟悌吾に、区分所有権が転売された場合、管理者(管理組合)は、区分所有者ではなくなった者に帰属する損害賠償請求権について訴訟追行権を失います。
(3)これに対して、区分所有権の転得者について、管理者(管理組合)は、転得者(訴訟後に、区分所有者になった者)に帰属する損害賠償請求権を行使する訴訟追行権を行うことができるでしょうか。
‘(4)判例(最判平成19年7月6日(判例タイムズ1252号120頁)、仙台地裁令和5年2月20日(判例タイムズ1515号143頁))は、管理者が原告として、共有部分に関する損害賠償請求権を提起し、区分所有権が転売された場合、転得者(訴訟後に、区分所有者になった者)に帰属する損害賠償請求権について訴訟追行権を有すると判断しました。
区分所有法26条 1項 管理者は、共用部分並びに第21条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第47条第6項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。 2項 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第18条第4項(第21条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。 3項 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。 4項 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。 (以下、省略) |
区分所有法47条 1項 第3条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによって法人となる。 2項 前項の規定による法人は、管理組合法人と称する。 3項 この法律に規定するもののほか、管理組合法人の登記に関して必要な事項は、政令で定める。 4項 管理組合法人に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができな。 5項 管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる。 6項 管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第18条第4項(第21条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。 7項 管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。 8項 管理組合法人は、規約又は集会の決議により、その事務(第6項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。 (以下、省略) |