【商品等表示】周知な商品等表示主体の混同行為(1号)(商品の形態が、「商品等表示」に該当する場合)
2023/10/30 更新
このページを印刷周知な商品等表示主体の混同行為(1号)
以下の場合には、自己の商品等表示を使用することが禁止されます(不正競争防止法の2条1項1号)。
①他人の商品等表示(氏名、商号、商品の容器、包装)が、需要者の間で広く認識されていること(周知性)
②他人の商品等表示と自己の商品等表示が似ていること
③自己の商品等表示が付された商品について、その商品の販売する者(出所)が、他人であると誤認が生じること(混同)
商品形態と、商品等表示
(1)商品等表示は、氏名、商号、商品の容器、包装のことをいいます。これらには、その商品の販売する者が誰であるかを表示する機能(出所表示機能)があります。
(2)これに対して、商品の形態は、本来的には出所表示機能がありません。
(3)したがって、①商品の形態が、他の商品と異なる顕著な特徴を有すること、②特定の事業者において長期間に渡り独占的に利用される、もしくは、宣伝広告によって、その形態を有する商品が、特定の事業主の出所を表示するものとして、周知されている場合でない限りは、不正競争防止法の2条1項1号の「商品等表示」に該当しない。
(4)また、商品の形態、商品の技術的な機能及び効用を実現するために、他の形態を選択する余地のない不可避的な構成に由来する場合には、不正競争防止法の2条1項1号の「商品等表示」に該当しない(技術的形態除外説)。なぜなら、こような場合にも、不正競争防止法の保護を認めると、特許権等の工業所有権制度によることなく、当該形態により実現される技術、効用を保護することになるからである。
判例
(1)ガスバルブの需要者(購入者)は、ガスボイラーメーカーや、ガスバーナーメーカーの専門業者約30社に限られ、一般消費者が商品を見比べて購入する商品ではない。また、ガスバルブについては、安全性が求められるために、専門業者が2~3年かけてテストして購入を検討する。したがって、ガスバルブの形状(形態)は、特定の事業主の出所を表示する機能(出所表示機能)を有しない。同商品の形態は、不正競争防止法の2条1項1号の「商品等表示」に該当しない。
令和4年12月23日東京地判
判例タイムズ1511号231頁。
(2)本件では、被告のガスバルブは、原告製品の互換製品として開発された者であった。そうだとすれば、同商品の形態は、商品の技術的な機能及び効用を実現するために、他の形態を選択する余地のない不可避的な構成に由来する。したがって、技術的形態除外説の観点からも、不正競争防止法の2条1項1号の「商品等表示」に該当しないことが説明可能な事案であった。(判例タイムズ1511号233頁。)