【遺言】遺産分割後、後日、遺言が見つかったとき
2024/10/06 更新
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遺産分割後、後日、遺言が見つかったとき
遺産分割後に、遺言を見つけた場合はどうなりますか?
後日、遺言を見つけた場合、既に成立した遺産分割協議(遺産をどう分けるかの合意)は無効となるのが原則です。
しかし、表見相続人は、民法884条の相続回復請求権の消滅時効もしくは、民法162条の取得時効を主張できます。
これらの請求が認められた場合には、遺産分割で認められた財産をそのまま保持してよいことになります。
民法884条の相続回復請求権の消滅時効
(1)相続財産回復請求権は、本来の相続人の物権的請求権その他請求権の集合体(個別請求権説)です。
(2)民法884条の効力により相続人またはその法定代理人が、相続権を侵害された事実を知った時から5年間請求権を行使しないか、相続開始時から20年を経過したときには消滅します。
これが、民法884条の相続回復請求権の消滅時効です。
(3)民法884条は、所有権は時効にかからない、という原則の例外であり、法律関係の早期安定を図ろうとした規定です。
(4)民法884条の相続回復請求権の消滅時効を主張できるのは、表見代理人に限られます。
表見相続人は、戸籍上の相続人であるが、何らかの事情で相続権がない者であり、相続権があるものと信じるべき合理的理由が必要です(善意かつ、合理的理由が必要です)。
民法第884条
相続回復請求権 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。
相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする。
遺産分割後に、後日、遺言が見つかった場合と、相続回復請求権(民法884条)
後日、遺言が見つかった場合、遺言による本来的な相続人(真正相続人)と、遺言の存在を知らず、法定相続分で相続できると信じた表見相続人がいることになります(本来の相続分を超えて相続財産を取得した者も、善意かつ、合理的な理由があれば表見相続人です)。
この場合、表見相続人は、民法884条の相続回復請求権の消滅時効を主張することができます。
遺産分割後に、後日、遺言が見つかった場合と、取得時効(民法162条)
遺言の存在を知らず、法定相続分で相続できると信じた表見相続人は、民法884条の相続回復請求権の消滅時効とは別に、取得時効の主張はできないでしょうか?
令和6年3月19日の最判では、次のような判決が示されました。
<最判令和6年3月19日>
- 民法884条の相続回復請求権の消滅時効と、民法162条所定の所有権 の取得時効とは要件及び効果を異にする別個の制度です。
- 民法884条の相続回復請求権の消滅時効が完成する前であっても、表見相続人は、民法162条所定の時効取得の要件を満たせば、相続した財産の所有権を時効により取得することができます。