【量産品の応用美術】判例(タオルの形状は応用美術(実用目的がある美術品)であり、著作物にあたらない。著作権者が、自身の著作物の利用を第三者に許諾して、第三者からその許諾料(ロイヤリティ)を得ているにとどまる場合、著作権法114条2項の適用はない。この場合には、著作権法114条3項に基づいて損害額が算定される。)
2025/03/03 更新
このページを印刷東京地裁令和6年3月28日(判例タイムズ1528号216頁)
タオルの形状(応用美術)と著作権
(1)応用美術とは、 実用目的の商品に、美術を応用したものです。量産品であっても、それ自体が高い創造性を備えている場合には、著作物に該当します。
(2)本件では、原告は、タオルに付けられた絵柄と、タオルの形状が別々に著作物にあたる、と主張しました。
(3)判決では、絵柄については著作権性を認めましたが、タオルの形状については著作権性を認めませんでした。
(4)量産品の応用美術には高い創造性がなければ、著作物と認められません。
したがって、絵柄が付されたタオルについて、絵柄を除いて著作権性が認められる余地はほとんどありません。

著作権法114条2項の適用
(1)絵柄の著作権侵害について、損害学が問題になりました。
(2)本件では、原告は、著作権法114条2項による計算にて損害額を主張しました。
(3)著作権法114条2項は、侵害者の利益の額を損害額と推認するものです。
同法同項は、「侵害者の譲渡数量」×「単位あたりの侵害品の利益」で損害額を推認します。
(4)判決は、原告(著作権者)が、自身の著作物の利用を第三者に許諾して、第三者からその許諾料(ロイヤリティ)を得ているにとどまることを理由に、著作権法114条2項の適用はない。この場合には、著作権法114条3項に基づいて損害額が算定されるべきである、としました。
もっとも、原告と被告は著作権侵害について中間合意をして、原告は被告から損害の賠償として3億円の支払いを受けていました。そのため、判決は、損害は弁済済みであるとして、追加の損害を認めませんでした。
(5)著作権法114条は、損害の立証を軽減するものです。したがって、同条以上の損害があることを原告が立証すれば、それ以上の請求が可能です。また、被告が、同条での計算が不当であることを立証できれば、それ以外での計算方法で賠償額が決まります。
著作権者が、自身の著作物の利用を第三者に許諾して、第三者からその許諾料(ロイヤリティ)を得ているにとどまることを理由に、る場合、第三者が著作物を侵害した商品を製造又は販売したとしても、当該商品の売上の減少という不利益を受けるわけではありません。したがって、著作権者が、第三者に著作物の利用を許諾し、その許諾料(ロイヤリティ)を得ているにとどまる場合、著作権法114条2項の適用はない。この場合には、著作権法114条3項に基づいて損害額が算定されるべきであるからです。
東京地裁令和6年3月28日
判例タイムズ1528号216頁)