(建物としての基本的な安全性を欠くこと理由とする)民法709条の請求と、20年の除斥期間
2024/09/13 更新
このページを印刷建物としての基本的な安全性を欠くこと理由とする民法709条の請求
瑕疵担保責任の除斥期間は最大で10年である。
しかし、民法709条の不法行為の除斥期間は20年である。
引き渡しより10年を経過している事案では(建物としての基本的な安全性を欠くこと理由とする)民法709条の請求を検討することになる。
除斥期間の問題点
実際には、建物の完成から20年以上を経過している事案で、「建物としての基本的な安全性を欠く」こと理由とする民法709条の不法行為責任を請求する場合には、20年の除斥期間が問題となる。
問題となる点
① 除斥期間の起算点
② 裁判上の権利行使の要否
③ 除籍期間の利益の放棄
①除斥期間の起算点
20年の除斥期間の起算点は、建物が完成したときである。
建物の完成から20年(仮に、完成後に、具体的な損害生じた場合にはその損害が発生したときから20年)に訴訟を提起しなければならない。
②裁判上の権利行使の要否
例えば、民法570条の瑕疵について、瑕疵の存在を知ってから1年以内に権利行使しなければ、契約不適合(瑕疵担保)を請求できなくなる。この1年間の期間制限は除斥期間である。しかし、「内容証明で瑕疵担保責任を請求すると通知する」など、裁判外での権利行使すれば、訴訟的をしなくても、同権利は保全される。
同じく考えれば、民法709条の20年の除斥期間についても、裁判外での権利行使で足りるという考え方もある。
しかし、判例(仙台地裁令和5年2月20日)は、裁判外での権利行使では足りない、と判断しています。
参考
判例タイムズ1515号145頁
「この場合の20年の除斥期間について、②裁判上の権利行使の要否」について詳しく解説されています。
③除斥期間の利益の放棄
大阪高判平成13年4月27日(判例タイムズ1105号96頁)では、裁判所において、被告が除斥期間を主張しなかった事案で、これを除斥期間の利益を放棄する意図であると認定したものがあるが、除斥期間の利益の放棄は限定的に認められる。
建築会社から建築事業の譲渡を受けたY3社が「補償問題をなおざりする考えは毛頭ございませんし、法的にも、工事完了をもって貴組合の迷惑料(補償料)の請求権が消滅するような権利関係にありません。」という文書を送った事案では、除斥期間の利益の放棄は認められない。
仙台地裁令和5年2月20日
参考
判例タイムズ1515号143頁