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判例(逮捕された被疑者を犯人であると誤信させる報道をすれば、名誉毀損となる。また、顔と声を加工するとの約束のもとで撮影したが、約束に反してその顔を放送すれば、肖像権(みだりに公表されない権利がある)の侵害となる。なお、声に関しては、個人識別機能を有しないのでみだりに公表されない権利があるとはいえない)

2024/09/07 更新

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事例

(1)テレビのディレクターは、顔と声を加工するとの約束のもとでXを撮影した。

(2)Xが逮捕された。

(3)テレビ局は、テロップ等を使って、(Xが逮捕された被疑者であるという客観的な事実を超えて、)あたかもXが犯人であるとの報道をした。具体的には、以下のような報道がされた。

 Xが取材に応じる様子が映し出され、 「男の巧妙な手口と男の裏の顔でした。」というテロップが付されていた。

 従業員が「社長はやっていないと信じている」と発言した様子が映し出され、「従業員の方も詐欺については知らなかった?」というテロップが付されていた。t4流れて、Xが話すさいには

 Xの映像の後に、MCが、「Xは自分も騙された(関係ない)と偽装しょうとしている。」という発言をした。

(4)テレビ局は、上記の放送のさいに、約束に反してその顔と声を放送した。

判決

(1)逮捕された被疑者を(Xが逮捕された被疑者であるという客観的な事実を超えて、)あたかも犯人であると誤信させる報道をすれば、名誉毀損となる。

(2)また、顔と声を加工するとの約束のもとで撮影したが、約束に反してその顔を放送すれば、肖像権(みだりに公表されない権利がある)の侵害となる。

(3)なお、声に関しては、個人識別機能を有しないのでみだりに公表されない権利があるとはいえない。

解説

(1)逮捕された被疑者を(Xが逮捕された被疑者であるという客観的な事実を超えて、)あたかも犯人であると誤信させる報道をすれば、名誉毀損となります。

(2)テレビ局は、真実相当性の抗弁を主張しました。しかし、被疑者はあくまで、犯人であること疑いがある人にすぎません。有罪判決が確定していない者を犯人であると信じるについて信じる相当であるとするのは、例外的な場合に限られます。

 本件では、真実相当性の抗弁は認められませんでした。

(3)肖像権は、みだりにその容ぼう公表されない権利です。本件では、約束に反して、その容ぼうが放送されたので、肖像権の侵害が認められました。

(4)なお、声に関しては、個人識別機能を有しないのでみだりに公表されない権利は認められませんでした。

(令和5年3月24日東京地裁)

参考

判例タイムズ1522号209頁

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