ご質問・ご相談などお気軽にお問い合わせください。

TEL 06-6773-9114

FAX 06-6773-9115

受付時間 : 平日10:00 ~18:00 土日祝除く

メールでの
お問い合わせ

労災保険給付と、損害賠償請求

2023/12/17 更新

  このページを印刷

労災保険給付と、損害賠償請求

(1)労基法84条は、「労災保険給付で支給された金額について、会社は賠償する義務を免れる。」と規定する。

(2)労災保険法12条の4の1項は、「従業員が第三者に対し損害賠償請求権を有する場合に、その損害について労災保険給付がされた場合、国はその額を第三者に損害賠償請求できる。」と規定する。

(3)労災保険給付も損害賠償請求も同じ損害を補填するものであるので、上記のように調整する旨が記載されています。

労災給付が先行する場合

(1)労災保険給付が先行して支払われる場合、既に被害者はその額の支給を受けていることから、被害者が請求できる損害賠償は、その額分減額されます。

(2)しかし、労災保険給付は項目ごとに給付されており、民事上の損害賠償請求が減額される項目は、以下の項目の金額に減額されます。

 例えば、休業補償給付(休業給付)が100万円だとして、休業損害及び逸失利益が80万円であれば、民事上の損害賠償請求が減額される金額は80万円に限られる。

労災補償給付減額対象となる費用
療育補償給付(療育給付)治療費
休業補償給付(休業給付) 障害補償給付(障害給付) 傷病補償年金(傷病年金)休業損害及び逸失利益
遺族補償給付(遺族給付)死亡逸失利益
葬祭料(葬祭給付)葬儀関係費
介護補償給付(介護給付)介護費

 なお、療育補償給付(療育給付)が入院雑費、通院交通費、付添介護費等の積極損害の補填になるかは争いがあります。

(4)労災保険給付の特別支給金(休業特別支給金、障害特別支給金等)は、民事上の損害賠償請求が減額されません。

(5)なお、被害者の相続人が遺族年金を受け取ったときは、民事上の損害賠償請求のうち逸失利益についてその額が減額されます。なお、遺族年金については口頭弁論集結時においって、支給が確定している分までは減額の対象となります。

参考 

 大島眞一「交通事故事件の実務-裁判官の視点-」131頁以下

民事上の損賠償請求が先行した場合

(1)民事上の損害賠償として支払いを受けた場合には、国はその額について、労災給付等をする義務を免れます(労災保険法12条の4の2項)。

(2)労災保険給付も損害賠償請求も同じ損害を補填するものであります。被害者は、民事上の損害賠償として支払いを受けた場合にはその額について、被害者は労災給付等を請求できなくなります。

示談と労災保険給付

(1)民事上の損賠償請求について示談が成立した後に、労災保険給付をすることが認められるでしょうか。

(2)示談によって、民事上の損賠償請求がなされて、もはや損害がないと判断された場合には、国はその額について、労災給付等をする義務を免れます(労災保険法12条の4の2項)。

(3)これを防ぐために、将来の労災保険給付をすることが考えられる際には、示談書に、「被害者は労災保険給付をすることができる」「労災保険給付を放棄しない。」ことを明記しておくことが必要です。

参考

 「自由と正義」2023年12月号15頁以下

「法律基礎知識」トップに戻る

Contact.お問い合わせ

    ※個人情報の取り扱いについては、プライバシーポリシーをご覧ください。