養育費と婚姻費用の標準算定方式の改訂(令和1年12月23日)
2024/07/02 更新
このページを印刷婚姻費用や養育費の合意
(1)婚姻費用や養育費の金額は、夫婦の合意で決めることができます。
(2)合意がない場合には、当事者の収入(標準算定方式)によって、その金額が決まります。
養育費と婚姻費用の標準算定方式の改訂
令和1年12月23日に、養育費と婚姻費用の算定表が改訂されました。
新基準よりも旧基準の方が養育費、婚姻費用の金額が大きくなります。
どの時期からどちらの基準を使うのか問題となります。
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
家庭裁判所での運用
(1)家庭裁判所の運用では、養育費(婚姻費用)について具体的な金額の合意がされていない限りには、令和1年12月以前の未払いの養育費(婚姻費用)について新基準を使うとの運用がされていました。
(2)その理由は、養育費と婚姻費用の算定表が改訂されたのは現状の社会的実態を反映させた結果であるから、 養育費(婚姻費用) については新基準を使うべきと考えるからです。
(3)もちろん、令和1年12月以前の養育費(婚姻費用)について旧基準とする旨の合意書等が取り交わされている場合には旧基準がそのまま有効となる。つまり、新基準との不足を請求することはできない、とされていました。
審判
婚姻費用について具体的な金額の合意がされていない限りには、令和1年12月以前の未払いの婚姻費用についても新基準を使う、と審判があります。
令和2年11月30日審判 宇都宮家庭裁判所
判例タイムズ1497号251頁
審判の解説
(1) 家庭裁判所の従前の運用を肯定したものとなります。
(2) 養育費(婚姻費用)については、調停申立時から支払い義務が発生します(調停申立時 )。そうすると、令和1年12月以前の養育費(婚姻費用)について問題となるのは、令和1年12月以前に養育費(婚姻費用)について調停の申立時がされた事案等に限られます。本論点は過去の話となるかもしれません。
(3) 本審判では、養育費(婚姻費用)については、内容証明による請求日を始期としています。しかし、「前調停の時点で、婚姻費用の始期を前調停の申し立て時であることを合意していた。前調停を取り下げて、その後、後調停の時点で、内容証明による請求日を始期とすべきとの主張があり、これを認めた。」という特段の事情があります。
養育費(婚姻費用)の始期については、調停申立時から支払い義務が発生するという実務的運用は大きく変化しないと考えます。