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判例(UNCHOKEの通信は、(著作権法の)送信可能化権の侵害とならない。したがって、UNCHOKEの通信で記載されたIPアドレスについて、発信者情報の開示を求めることはできない。)

2025/08/08 更新

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ピア・トウ・ピアのファイル交換ソフト

ピア・トウ・ピアとは、複数のコンピューター間で通信を行う(情報を交換する)方式の一つで、対等の者(ピア)同士が接続する方式です。

ピア・トウ・ピアのファイル交換ソフトは、パソコンをインターネットで繋いで、お互いが持っている動画やソフト等を交換する仕組みです。

ファイル共有ソフト「Winny」等が有名です。

BitTorrent(ビットトレント)とIPアドレス

BitTorrent(ビットトレント)は、現在、流行っているピア・トウ・ピアのファイル交換ソフトです。

BitTorrent(ビットトレント)はユーザーのIPアドレスは公開されるため、ユーザーのIPアドレスを簡単に知ることができます。

そもそも、同ソフトの場合、違法なソフトの共有を禁止する目的で、IPアドレスを容易に知ることができるような設計がされているそうです。

BitTorrent(ビットトレント)の仕組み

BitTorrent(ビットトレント)では、特定のファイルをピースに分けて、各人のパソコンに分散して保存します。

まず、特定のソフトをダウンロードしたい人は、ピース(特定のファイルの一部)をどのパソコンが保有しているかの情報を取得します(UNCHOKEの通信)。

次に、特定のソフトをダウンロードしたい人は、その情報をもとにピースを持っているユーザー(のパソコン)からソフトをダウンロードします。

BitTorrent(ビットトレント)のUNCHOKEの通信

ネットワークに接続しているユーザー(のパソコン)をピアといいます。

BitTorrent(ビットトレント)のUNCHOKEの通信は、「ファイル交換ソフト上のネットワークに接続しているパソコン(ピア)が稼働しているか、そのパソコン(ピア)がピース(特定のファイルの一部)を保有しているか、そのパソコン(ピア)のIPアドレス」に付いての情報通信です。

つまり、BitTorrent(ビットトレント)のUNCHOKEの通信は、「当該ピア(パソコン)が稼働しているか、ピース(特定のファイルの一部)を保有しているか」を確認する通信であって、ピース(特定のファイルの一部)をダウンロードする通信そのものではありません。

判決

UNCHOKEの通信は、「ファイル交換ソフト上のネットワークに接続しているパソコン(ピア)が稼働しているか、ピースを保有しているか(特定のファイルの一部)」を確認する通信であって、ピース(特定のファイルの一部)をダウンロードする通信そのものではない。

したがって、プロバイダー責任法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づいて、UNCHOKEの通信で記載されたIPアドレスについて、発信者情報の開示を求めることはできない、としました。

(令和6年3月14日東京地裁)

参考

判例タイムス1524号246頁

解説

原告は、ビデオ等の作成を行う著作権者です。

プロバイダー責任法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)は、自己の権利を侵害された者に対し、発信者情報の開示を認めています

本件では、BitTorrent(ビットトレント)のUNCHOKEの通信が、原告の著作権、特に、送信可能化権を侵害するか、が問題となりました。

送信可能化権の侵害とは

送信可能化権の侵害は、自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制するものです。

著作権法2条1項9の5に該当する行為があれば、送信可能化権の侵害となります。

例えば、インターネットで複数人がアクセルできるサーバー(自動公衆送信装置)にデータ(著作物)をアップロードすることや、データ(著作物)に入っている自分のパソコンからデータをダウンロードを許可する(接続する)ことは、送信可能化権の侵害にあたります。

しかし、BitTorrent(ビットトレント)のUNCHOKEの通信は、「当該ピア(パソコン)が稼働しているか、ピース(特定のファイルの一部)を保有しているか」を確認する通信であって、ピースをダウンロードする通信そのものではなく、送信可能化の侵害にあたりません。

したがって、判決は、プロバイダー責任法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づいて、UNCHOKEの通信上、記載されていたIPアドレスについて、発信者情報の開示を求めることはできない、としたものです。

実務的には、このような解釈で統一されるようです。

著作権法

著作権法2条1項9の5
(送信可能化とは)次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。

イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。

ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。

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