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Q 取得時効について教えて下さい。

2025/10/19 更新

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取得時効

 取得時効は、他人のものであっても、20年間等の一定期間、自分のものだと占有(利用)していた場合に自分のものとなる制度です。

取得時効の適用場面

1 ケース1
  A → B → C という形で、土地が譲渡された。
  「AとBの取引は無効であった。」 としても、Cはその土地の取得時効の要件を満たせば、Cはその土地の所有権を取得する。

2 ケース2
  A → B → C という形で、土地が譲渡された。
 物権の原則として、権利者から譲渡を受けなければ、その権利を取得できない、という原則がある。
 しかし、「Aが本当に権利者か不明である」 としても、CはAの占有から計算して、その土地の取得時効の要件を満たすせば、Cはその土地の権利者となる。

3 ケース3
 Aが建物を増築させて、Bの土地にはみ出していた。 
 Aの占有について、Aはその土地の取得時効の要件を満たせば、Aはその土地の所有権を取得する。

10年の取得時効の要件事実

①ある時点で、占有をしていたこと

②の時点から10年を経過した時点で目的物を占有していたこと

③占有開始時に、善意無過失であったこと

④時効援用の意思表示をしたこと

判例
 取得時効を主張する者は、占有するものが他人のものであることを立証する必要はない(判例)。

民法の推定規定
(1)占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する(民法186条1項)。
(1)前後の両時において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する(民法186条2項)。

民法162条 所有権の取得時効
1項 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2項 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。


民法163条 所有権以外の財産権の取得時効
 所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。

民法186条 占有の態様等に関する推定
1項 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
2項 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。

民法187条(占有の承継)
1項 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
2項 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する

自主占有・他主占有

(1)取得時効が成立するには、所有の意思を持って占有することが必要である。

(2)所有の意思のある占有を自主占有という。

(3)他人の土地を借りているという意思のある占有を他主占有という。

自主占有(他主占有者の特定承継人が自主占有を開始した場合)

1 具体例
 土地の賃借人Aが、当該賃借権をBに譲渡し、土地をBに引き渡した。
 その後、Bが所有の意思をもって20年間土地を占有した。

2 要件事実
(1)承継人Aは、自己の占有のみを主張することも、前占有者であるBの占有者を主張することもできる(民法187条1項)

(2)もっとも、前占有者であるBの占有では取得時効が成立しない。したがって、承継人Aは、自己の占有が自己占有を立証しなければならない。

(3)要件事実としては、民法186条1項で、所有の意思が推察されるので、相手方が「Aが他主占有者の特定承継人であること」を立証し、これに対して、Aは自己の占有が自己占有であることを立証することになる。

自主占有(他主占有者の相続人が自主占有を開始した場合)

1 具体例
 土地の賃借人Aが死亡し、Bが相続して土地を占有した。
 その後、Bが所有の意思をもって20年間土地を占有した。

2 要件事実
(1)承継人Aは、自己の占有のみを主張することも、前占有者であるBの占有者を主張することもできる(民法187条1項)

(2)もっとも、前占有者であるBの占有では取得時効が成立しない。したがって、承継人Aは、自己の占有が自己占有を立証しなければならない。

(3)要件事実としては、民法186条1項で、所有の意思が推察されるので、相手方が「Aが他主占有者の相続人であるること」を立証し、これに対して、Aは自己の占有が自己占有に変わったこと(外形的客観的に見て、被相続人とは違う、相続人独自の所有の意思に基づく占有と認めるべき事情)を立証することになる。

最判平成8年11月12日

 他主占有していた被相続人を相続した相続人が、相続人の占有が「所有の意思に基づく占有」であると主張するためには、当該相続人において、「相続人の占有が事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情」を立証する必要がある。

自主占有(他主占有者が自主占有へと転換した場合)

1 具体例
 土地の賃借人Aが、自主占有に転換し、それから20年間占有を継続した。

2 要件事実
 他主占有者であったAが、自己の占有に変換するには、所有の意思があることを示したと評価できる事情もしくは、新たな権限により所有の意思をもって占有したことが必要です(民法185条)

民法185条 占有の性質の変更
 権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。
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