Q 消滅時効の起算点について教えて下さい。
2025/10/19 更新
このページを印刷消滅時効
(1)消滅時効は、5年間等の一定期間、請求しないとその請求が消滅する制度です。
(2)消滅時効を主張するには、内容証明等の記録が残る方法で、「時効援用する。」と記載された文書を送る必要がある。
5年の消滅時効の要件事実
主観的起算の要件事実
①権利を行使できることを知ったときから5年が経過したこと
②援用の意思表示がされると、時効により債権が消滅する。
①「権利を行使することができる時から10年間が経過したこと」は客観的起算点の要件である。 |
契約上の債権と主観的起算点
(1)契約上の債権については、客観的な起算点(弁済期)と主観的な起算点は一致する。
(2)例えば、債権者が弁済期の到来時に意思無能力になっていた場合や、 債権者がその相続人に弁済期を知らせずに死亡した場合でも、 弁済期が到来すれば, 債権者がそれを「知った」 と解してよい。
(3)これに対して、損害賠償については、損害の発生等に気がつかないので主観的な起算点と客観的起算点が不一致となる可能性がある。
消滅時効の客観的起算点
(1)期限の定めのある債権の場合、期限の到来時が客観的起算点となる。
(2)期限の定めのない債権の場合、債権成立時が客観的起算点となる。
(3)期限の定めのない金貨資金返還請求権は、返還請求時から相当期間経過後に返済する義務が生じる(民法591条1項)ので、相当期間経過後が客観的起算点となる。
参考
岡口基一「要件事実マニュアル(第6版)第1巻 総論・民法1」306頁
民法166条(債権等の消滅時効) 1項 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。 二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。 2項 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する (省略) 民法167条(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効) 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1項第2号の規定の適用については、同号中「10年間」とあるのは、「20年間」とする。 |
主観的起算点の5年の時効の計算
(1)時効の計算において初日は計算しない。
(2)令和2年7月末日が起算点だとすれば、翌日の8月1日から計算する。
5年後だとすれば、令和7年7月末日が満了日である。
「①権利を行使できることを知ったときから5年が経過したこ」とは、「令和7年7月末日を経過した」という意味になる。
参考
岡口基一「要件事実マニュアル(第6版)第1巻 総論・民法1」308頁