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刑事弁護の流れ

Q 被告人の取調べ調書について不同意とした場合の後の手続きについて教えてください。

2025/10/29 更新

伝聞証拠禁止の原則

(1)伝聞証拠とは、刑事裁判において、法廷の外でなされた供述内容を、その供述内容が真実であることを証明するために証拠として用いる証拠です。

(2)文書の作成者が、〇月〇日にAという事実を見て、これを文書で報告する内容の文書と理解してもらってもよいでしょう。

(3)刑事裁判では、「伝聞証拠については、その作成者が法廷で証言することが原則とすること」「伝聞証拠については相手方の同意のない限り、証拠とできないのが原則とすること」になっています。

被告人の取調べ調書

1 刑事訴訟法の規定

(1)警察官等が、被告人を取り調べた調書については、刑事訴訟法322条により、任意性を争わない限りは証拠とすることができる、とされています。刑事訴訟法は、「被告人に不利益な事実の承認を内容とするもの」であるときと限定していますが、弁護人として不同意にしたいのは正にこの部分です。

 刑事訴訟法では、任意性に疑いがない限り、被告人を取り調べた調書については、証拠とすることを認めているようなものです。

(2)これは、被告人は、法廷にて弁解も含めて、自分の意見を述べることができるから、と説明されています。

刑事訴訟法 第322条 
1項 被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第319条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。
2項 被告人の公判準備又は公判期日における供述を録取した書面は、その供述が任意にされたものであると認めるときに限り、これを証拠とすることができる

2 証拠意見

(1)弁護人として、被告人の取り調べ調書について不同意とする場合には、任意性を争うかどうかについて、証拠意見に記載する必要があります。

(2)例えば、以下のように記載することになります。

 「乙1号証は不同意。ただし、任意性は争わない。」

 「乙2号証は不同意。任意性を争う。なぜなら。。。。」

被告人の取調べ調書について不同意とした場合の後の手続

1 被告人質問

(1)被人の取調べ調書が不同意とされているので、被告人の取調べ調書の証拠採用の前に、被告人質問を先にすることになります。

(2)被告人の法廷での供述において、反対尋問にて、検察官が、「被告人は、警察官のと調べては〇〇と述べていませんでしたか。」と質問します。

 これに対して、被告人が弁解する(回答する。)ということが行われます。

(3)実際の法廷で、被告人が「そのようなことを言ったのか記憶にない。」と供述するのではなく、被告人が「□□と言ったことは事実であるが、今は〇〇が正しい。なぜなら、△△だから。」と説明するのであれば、被告人の取り調べ調書を提出を認める必要がなくなります。

 したがって、裁判所の運用において、裁判官が「被告人質問で、心証がとれたので、被告人の取調べ調書の必要性がないと思う。」と発言し、検察官が「被告人の取調べ調書の証拠調べ請求を撤回します。」と回答することがあります。

 この場合には、結局、被告人の取り調べ調書は、証拠にならない(裁判所に提出されない)、ということになります。

検察官の証拠調べ請求

(1)被告人質問の後に、検察官が、322条に基づいて、被告人の取調べ調書について証拠調べ請求をすることになります。

(2)被告人が、任意性を争っていない場合には、検察官が被告人の取調べ調書について証拠調べ請求をするための要件は、以下のものとなります。

①被告人取調べ調書の内容が、被告人が自己に不利益な内容を認めていること内容であること

②被告人質問等の結果を踏まえても、その被告人取調べ調書を取り調べる必要があることです。

(3)裁判所が、上記の要件を満たすと認めれれば、結局、被告人の取調べ調書は証拠採用されてしまいます。

参考(検察官の取調べ請求書)

                  証拠取り調べ請求書

大阪地方裁判所 御中
                               検察官検事 〇〇

 被告人〇〇に対する〇〇被告事件について、下記のとおり証拠調べを請求する。

第1 請求証拠
 乙1号証(全て)
 乙2号証(6頁の3行目以下から7ページの行目まで)

第2 請求の理由
1 はじめに
 前記第1に記載の請求証拠は、いずれも被告人の供述を録取した書面で被告人の署名及び押印があるものであり、かつ、任意性があらそわれておらず、任意性に疑いを生じさせる事情も認めなれない。
 したがって、以下では、前記第1に記載の請求証拠について「被告人に不利益な事実の承認を内容とするもの」にあたること、これらを採用する必要性について記述する。
2 乙1号証について
(1)「被告人に不利益な事実の承認を内容とするもの」
 乙1号証では、以下のような記載がある。
 〇〇〇〇
 これは、被告人が〇〇したことを認めるものであり、被告人に不利益な事実の承認を内容とするものにあたる。
(2)取り調べる必要性
 これ対して、被告人質問にて、被告人は〇〇と証言し、結局、上記の部分について供述したことは認めなかった。
 したがって、被告人が警察官の取調べにて、上記の部分の供述をしたことは、被告人質問にて顕出されなかったのであるから、検察官の立証において表記の証拠の取調べが必要である。

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