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判例(SNSの特定のアカウントから他人の権利を伸がする投稿がされた場合、そのアカウントのログイン、ログアウト情報は、プロバイダー責任法の「侵害関連情報」にあたり、同情報について、発信者情報開示請求が認められた)

2025/09/30 更新

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最判令和6年12月23日 

 SNS(インスタグラム)のアカウントから他人の権利を伸がする投稿が複数回された。

 そのアカウントの8回のログイン等がされていた。

 他人の権利を侵害する投稿をしたときと、近接する1回のログイン、ログアウト情報は、プロバイダー責任法の「侵害関連情報」にあたり、同情報について、発信者情報開示請求が認められる。

 これに対して、特段の必要性がない限り、残り8回のログイン、ログアウト情報は、プロバイダー責任法の「侵害関連情報」にあたらず、発信者情報開示請求は認められない。

最判令和6年12月23日

判例タイムズ1535号70頁頁以下

侵害関係情報

(1)「侵害関連通信」とは、令和3年のプロバイダ責任制限法改正により導入された概念で、インターネット上での権利侵害投稿と「相当の関連性を有する」と判断されるアカウントのログイン、ログアウト等の通信のことである。

(2)ログイン、ログアウト情報は、権利侵害投稿そのものではないが、その投稿の送信と関連性のある通信であることから、特定の場合に開示が認められるようになった。

プロバイダー責任法(発信者情報の開示請求)
第五条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対し、当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報のうち、特定発信者情報(発信者情報であって専ら侵害関連通信に係るものとして総務省令で定めるものをいう。以下この項及び第十五条第二項において同じ。)以外の発信者情報については第一号及び第二号のいずれにも該当するとき、特定発信者情報については次の各号のいずれにも該当するときは、それぞれその開示を請求することができる。
一 当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
三 次のイからハまでのいずれかに該当するとき。
イ 当該特定電気通信役務提供者が当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報を保有していないと認めるとき。
ロ 当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報が次に掲げる発信者情報以外の発信者情報であって総務省令で定めるもののみであると認めるとき。
(1) 当該開示の請求に係る侵害情報の発信者の氏名及び住所
(2) 当該権利の侵害に係る他の開示関係役務提供者を特定するために用いることができる発信者情報
ハ 当該開示の請求をする者がこの項の規定により開示を受けた発信者情報(特定発信者情報を除く。)によっては当該開示の請求に係る侵害情報の発信者を特定することができないと認めるとき。
2 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときは、当該特定電気通信に係る侵害関連通信の用に供される電気通信設備を用いて電気通信役務を提供した者(当該特定電気通信に係る前項に規定する特定電気通信役務提供者である者を除く。以下この項において「関連電気通信役務提供者」という。)に対し、当該関連電気通信役務提供者が保有する当該侵害関連通信に係る発信者情報の開示を請求することができる。
一 当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
3 前二項に規定する「侵害関連通信」とは、侵害情報の発信者が当該侵害情報の送信に係る特定電気通信役務を利用し、又はその利用を終了するために行った当該特定電気通信役務に係る識別符号(特定電気通信役務提供者が特定電気通信役務の提供に際して当該特定電気通信役務の提供を受けることができる者を他の者と区別して識別するために用いる文字、番号、記号その他の符号をいう。)その他の符号の電気通信による送信であって、当該侵害情報の発信者を特定するために必要な範囲内であるものとして総務省令で定めるものをいう。

解説

(1)発信者情報開示請求が認められるためには、プロバイダー責任法の「特定電気電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害」するものにあたる必要があります。

 本判決では、本件画像にリンクするURLを貼り付けた行為は、プロバイダー責任法の「特定電気電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害」するものにあたらないとされました。

(2)この判決については、最判令和2年7月21日民集74巻4号1407頁(以下、「リツイート事件」という。)との整合性が問題とります。リツイート事件の事実の概要は以下のとおりです。

 X は、自己の氏名を書き加えた写真をブログに投稿しました。

 発信者が、同XのブログのURLを記載して転記してツイートしました。なお、URLを記載したことで、Xの写真画像を一部トリミングした画像がURLと共に表示されるようになりました。

 また、一部トリミングした画像には氏名表示部分が消えてしまい、その画像がツイートによって拡散することになりました。

(3)リツイート事件では、氏名表示権の侵害されたとして、発信者情報開示請求が認めらています。

(4)リツイートという投稿は、新たな情報を自分のフォロワーに拡散させるものであるから、「情報の流通によって自己の権利を侵害」するものにあたると判断されたものという説明もされています。(判例タイムズ1533号237頁)

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