判例(応用美術(実用目的がある美術品)について、商品の形態が不正競争防止法の「商品等表示」に該当するか、著作権法に違反するか。)
2025/08/09 更新
このページを印刷応用美術
応用美術とは、 実用目的の商品に、美術を応用したものです。
量産品であっても、それ自体が高い創造性を備えている場合には、著作物に該当します。

本件では、椅子という実用品の形状を活かして、特徴的な形状で、作成者の個性が活かされた高い美術性を持っています。

(判決文の原告の商品の写真から引用)
不正競争防止法の2条1項1号、2号と、商品の形状
1 原告の主張
不正競争防止法の2条1項1号、2号は、周知もしくは著名な「商品等表示」を第三者が使うことを禁止しています。
原告は、上記の椅子の形状は、不正競争防止法の2条1項1号、2号の「商品等表示」に該当し、被告の商品は不競争防止法違反にあたると主張しました。
2 被告の商品
被告の商品は以下のとおりです。

(判決文の被告の商品の写真から引用)
3 商品形態と、商品等表示
商品等表示は、氏名、商号、商品の容器、包装のことをいいます。
これらには、その商品の販売する者が誰であるかを表示する機能(出所表示機能)があります。
これに対して、商品の形態は、本来的には出所表示機能がありません。
したがって、①商品の形態が、他の商品と異なる顕著な特徴を有すること、②特定の事業者において長期間に渡り独占的に利用される、もしくは、宣伝広告によって、その形態を有する商品が、特定の事業主の出所を表示するものとして、周知されている場合でない限りは、不正競争防止法の2条1項1号、2号の「商品等表示」「商品等表示」に該当しません。
また、本来、商品の形態は、本来的には出所表示機能がなく、商標等の同じような保護を与えられる範囲は制限されるべきです。
したがって、商品の形状のうち出所表示機能を発揮する商品等表示部分については、明確に特定される必要があります。
4 判例(令和5年9月28日東京地判)
原告の商品の出所表示機能は、直線的なシャープな印象を与える部分にある。
しかし、被告の商品は、丸みをおびた曲線的な印象を与える作りになっており、出所表示機能を有しない。
したがって、同商品の形態は、不正競争防止法の2条1項1号、2号の「商品等表示」「商品等表示」に該当しない。
著作権性
1 原告の主張
原告は、被告の製品は原告の製品の複製もしくは飜案であるから、原告の製品の著作権を侵害すると主張しました。
2 被告の商品
被告の商品は前述のとおりです。
3 応用美術と著作権法違反
応用技術の場合には、特定の機能を有する必要があるために、表現の幅が制限されます。
アイデアと表現は別々の法体系で保護するという原則があり、応用美術については、機能(アイデア)が形状を決定する部分が大きいです。
したがって、デッドコピーでない限りは、著作権侵害にならないとされています。
4 判例(令和5年9月28日東京地判)
原告の商品は、直線的なシャープな印象を与える。
しかし、被告の商品は、丸みをおびた曲線的な印象を与える作りになっており、原告の製品の著作権を侵害しないと、判断された。
参考
判例タイムズ1526号231頁以下