判例(著作権にリンクするURLを記載(投稿)する行為は、著作権を直接侵害する行為にあたらないとして、発信者情報開示請求が否定された)
2025/08/11 更新
このページを印刷東京地裁令和6年1月18日
1 事案
(1)XはVTuberとして活動しており、本件画像を撮影し著作権を有していた。
発信者は、5ちゃんねるの掲示板に、本件画像へのリンクするURLを貼り付けた。
(2)URLを貼り付けたことによって、本件画像の解像度が下がった荒い画像がURLと共に表示されるようになった。
なお、このURLをクリックすれば、本件画像が投稿されている別のサイトに移動することになります。
また、このURLをクリックしなくても、解像度が下がった荒い本件画像が表示されることになります。
(3)投稿者は、Yをプロバイダーとして5ちゃんねるの掲示板に書き込みをしたとして、XはYに対し発信者情報開示請求を申し立てました。
2 判決
(1)発信者が、5ちゃんねるの掲示板に、本件画像にリンクするURLを貼り付けた行為は、プロバイダー責任法の「特定電気電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害」するものにあたらない。
(2)発信者情報開示請求は認められない。
東京地裁令和6年1月18日
判例タイムズ1533号235頁
解説
(1)発信者情報開示請求が認められるためには、プロバイダー責任法の「特定電気電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害」するものにあたる必要があります。
本判決では、本件画像にリンクするURLを貼り付けた行為は、プロバイダー責任法の「特定電気電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害」するものにあたらないとされました。
(2)この判決については、最判令和2年7月21日民集74巻4号1407頁(以下、「リツイート事件」という。)との整合性が問題とります。リツイート事件の事実の概要は以下のとおりです。
X は、自己の氏名を書き加えた写真をブログに投稿しました。
発信者が、同XのブログのURLを記載して転記してツイートしました。なお、URLを記載したことで、Xの写真画像を一部トリミングした画像がURLと共に表示されるようになりました。
また、一部トリミングした画像には氏名表示部分が消えてしまい、その画像がツイートによって拡散することになりました。
(3)リツイート事件では、氏名表示権の侵害されたとして、発信者情報開示請求が認めらています。
(4)リツイートという投稿は、新たな情報を自分のフォロワーに拡散させるものであるから、「情報の流通によって自己の権利を侵害」するものにあたると判断されたものという説明もされています。(判例タイムズ1533号237頁)