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刑事弁護の流れ

【基礎知識】少年事件の審判の流れ

2024/01/05 更新

少年事件の審判の流れ

 少年事件の審判の流れは以下のとおりです。

参加者

(1)重大事件については検察官も手続きに関与するが、それ以外の事件では検察官は参加しません。したがって、裁判官、書記官、調査官、付添人、少年、保護者、学校の先生、職場の上司等が参加することになります。

       〇裁判官

書記官 〇          〇 調査官
               〇 付添人

       〇   〇
       保護者 少年

(2)保護者にも審判の呼び出しがされる(少年審判規則25条2項)。保護者が出席しなくても審判を行うことができるが、規則として保護者の呼び出しが義務付けられている。
 その他、雇主、学校の先生にも、出席をお願いするこがあります。しかし、大人数の出席はできませんので、事前に裁判所との協議が必要となります。

審理の時間・日数

(1)少年が非行事実(例えば、無免許運転の事実)を認めるのであれば、初日に事実の取り調べと、(少年院送致等の)保護処分の決定までを行います。1日で審理が終了します。
(2)試験観察となった場合には、次回期日を設ます。1日では審理は終了しません。
(3)争いのない事案であれば、1時間程度で終了します。
 一般刑事事件と異なって、少年事件では、審理をしたその日に、保護観察や、少年院送致等の決定の言い渡しがあります。

審判の流れ

1 人定質問・黙秘権告知

人定質問(規則29条の2)
 裁判官が、少年に対して「本籍と住所が言えますか」と聞きます。

 ※ 少年が本籍と住所を暗記しているのか、打ち合わせが必要となります。

黙秘権等の告知(規則29条の2)
 裁判官が少年に対して「言いたくないことは言わなくてよいという権利があります。しかし、法廷で話したことは、有利不利を問わず証拠になります。」と説明します。

非行事実の告知・少年の陳述(規則29条の2第2文)
 裁判官が少年に対して非行事実に間違いがないか聞きます。
 例えば裁判官は少年に対し「バイクを運転したところ信号無視をして、被害者にケガをさせたということに間違いがないか」と聞いてきます。 

 少年は、「間違いありません。」と答えます。

付添人の陳述(規則29条の2第2文)
 裁判官が、「付添人ご意見は?」と質問します。
 付添人は「〇〇さん(少年の名前)と同意見です。」と答えます。

 少年事件では、弁護士のことを付添人と呼びます。

2 裁判官の少年に対する質問

(1)裁判官の質問
 少年事件では、裁判官が少年に対して詳しく話を来ます。
 その後に、付添人、調査官が少年に質問します。

(2)非行事実の質問
 非行事実の質問は、少年が刑法上の犯罪を行ったかどうについての質問です。

 例えば、「バイクを運転したところ信号無視をして、被害者にケガをさせたということに間違いがないか」という事案では、以下のような質問をします。

 裁判官の質問の例

Q なぜ、信号無視は行けないだと思いますか。(法律の根拠について)
Q 信号無視によって最悪どんなことが起こったと思いますか。
Q なぜ、信号無視をしてしまったのだと思いますか。(非行を犯した理由について)
Q どうすればよかったと思いますか。
Q 被害者はどんな気持ちだったと思いますか。(被害者に対する謝罪について)
Q 被害者に対して、どんな気持ちですか。  
Q 示談交渉はどうなっているか知っていますか。
Q 示談金はどうやって準備しましたか。
Q 親に立て替えてもらった場合には、親に返すつもりはありますか。
Q 少年の家族、職場、先生はどんな気持ちだと思いますか。
Q 犯罪を犯したと知って、職場はあなたを雇い続けると思いますか。

(3)要保護性の質問
 要保護性の質問は、少年が非行に至った背景や犯罪とはいえないが社会人としてふさわしくない事実、これをどう改善していく予定なのかの質問です。

 裁判官の質問の例
Q なぜ、高校に行かくなったのか。
Q なぜ、夜遊びをするようになったのか。
Q 一緒に、暴走行為をしていた友人との関係をどうするのか。
Q 将来をどう考えているのか。
Q 母子家庭で夜遅くまで働くお母さんについてどう思っているのか。
Q お母さんの言葉をなぜ、聞くことができないのか。
Q お母さんとの関係をどうしていくのか。
Q 一人暮らしをするのか、それとも親元で生活するのか。

3 付添人、調査官の少年に対する質問

(1)裁判官が少年、家族について質問をしたのちに、付添人、調査官が少年に質問します。
(2)裁判官は付添人に対し「付添人。質問はありますか。」と聞いてきますので、付添人は例えば、以下のような質問をします。

 付添人の質問の例
 「〇〇君が今回事故を起こしてしまった理由について、私は、〇〇君が信号無視をしてもバレなければいいと思っていると考えていたらだと思っています。〇〇君はどう考えますか。」
 「〇〇君は高校に入りなおすのか、就職するのか、将来について、どう考えていますか。」

4 裁判官の家族等(学校の先生・職場の上司)に対する質問

 裁判官は家族等(学校の先生・職場の上司)に対して、本人が立ち直るにあたってどんな支援をしてくれるのか、について質問します。

Q 普段は少年と話す時間はありますか。
Q 今回の事件をいつごろ、少年から聞きましたか。
Q 何回、少年に会いに行ってくれましたか。
Q 少年がタバコを吸っていたことは気づいていましたか。
Q 少年がバイクを購入することをなぜ許可したのですか。
Q 今回の件について、少年とどんな話をしましたか。
Q 少年に言いたいことはありますか。

子供が小学生であれば親が監督することもできます。しかし、自立しかけた子供に対し親ができることは多くはありません。子供に厳しくしても反発されるだけです。少年と話す時間をとること、少年が実家に帰りたいと申し出れば受け入れて食事だけでも提供すること等を約束して頂けるとありがたいです。

5 調査官の処遇意見の陳述・付添人の処分意見の陳述(規則30条)

 裁判官が付添人に対し「処遇意見は、先に提出された意見のとおりですね。」と質問します。
 付添人は「そのとおりです。」と答えます。
 

6 最終陳述

 裁判官が少年に対し「最後に何か言いたいことはありますか。」と聞きます。

 少年が最後に、5分程度話せるスピーチを用意するようにアドバイスすることが必要です。

7 保護処分の決定

(1)少年事件では、審理をしたその日に、保護観察や、少年院送致等の決定の言い渡しがあります。
(2)もっとも、裁判所は、同日、処分を決定することができない場合には、(少年を施設等に預けたり両親の下に少年を自宅に返し、様子を見て、次回期日に最終的な処分を決める試験観察の決定をするもあります。

8 抗告

 仮に裁判所の保護処分の決定に不服がある場合には、原決定告知の日の翌日から2週間以内に、高裁宛ての抗告理由書を原審の裁判所に提出する必要があります(少年法32条、少年審判規則43条1項)。

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